不動産投資の物件と選び方

東京の不動産は今後どうなるのか?開発が進む注目エリアを深掘り

あらゆる場所で再開発が進められている東京都心部。2021年の東京オリンピック終了後もなお、多数のエリアで建て替えや新ビルの建設が進んでいます。開発が進んでいることに加え、人口増加も続いている都心では不動産価格も堅調に推移していくと見込まれます。
都心部の再開発は該当エリアにおけるオフィス・商業不動産の需給だけでなく、周辺の居住エリアのマンション価格・賃料にも影響を与えます。再開発に関するこまめな情報収集が不動産投資での物件選びに重要となることも珍しくありません。
この記事では今後東京都心部の不動産がどうなっていくのか、そして注目の再開発エリアについて深堀りしていきます。

【目次】

東京の不動産は今後どうなるのか?
 地価・人口の下落は現状見られない
 これまでの都内再開発
 今後も再開発が続く予測
注目される再開発エリア①品川・高輪エリア
 高輪ゲートウェイシティプロジェクト(JR)
 京急の品川駅再開発プロジェクト
 品川・高輪エリアの住宅需要
 今後の見通し
注目される再開発エリア②八重洲・日本橋・大手町エリア
 「TOKYO TORCH」建設と周辺街区の再開発
 八重洲エリアでも超高層ビルが建設予定
注目される再開発エリア③横浜エリア
 横浜駅周辺の再開発プロジェクト
 住宅エリアの再開発も
将来を見越したワンルームマンション投資を

東京の不動産は今後どうなるのか?

「東京の不動産価格は上昇傾向が続くだろう」と言われています。なぜそう見込まれているのかデータと都市計画をもとにして分析していきます。

地価・人口の下落は現状見られない

不動産価格の推移に重要なのは地価と人口の推移です。地価の上昇下落はその後の不動産価格に大きな影響を与えるため、近い将来を分析する指標としてはかなり有効です。


引用:国土交通省「令和6年第1四半期地価LOOKレポート(2024年)」

2024年6月に発表された国土交通省の地価レポートによれば、東京と周辺主要都市では商業地・住宅地ともに四半期の地価が上昇しています。
また、前期(2023年第四期)から続けて高い上昇率を維持している6地区のうち3地区は23区内の都市となっています。(下記参照)


引用:国土交通省「令和6年第1四半期地価LOOKレポート(2024年)」

人口についても今後しばらくは増加する見込みです。

上記は東京都人口推計の変化をあらわすデータです。2013年の予測では2010年代後半をピークに東京都の人口は減少すると見られていましたが、2023年の予測では2040年を過ぎてもゆるやかに増加していく推計に変化しています。
不動産価格はそのエリアの住宅需要、ひいては人口推移に大きく影響されます。
人口増加による高い住宅需要が見込まれる東京では、しばらく不動産価格が安定すると考えられています。

これまでの都内再開発

都市の再開発は不動産価格へ大きな影響を与えるため、今後の不動産価格を分析するうえでは重要な情報です。
東京都心では2000年頃から老朽化したビルや住宅の取り壊し、建て替えが進んでいます。現在進められている長期的な都市計画は2000年に発表された「東京構想2000」をもとに策定されたものです。
「東京構想2000」では首都圏一帯を一体的な大都市として機能を最大限発揮させるための再開発を行うことを明示しています。
都心部を中心に「環状メガロポリス構造」と呼ばれる都市構造を目指し、さまざまな機能の一体化を進めてきました。


引用:東京都都市整備局(環状メガロポリス構造のイメージ図)

この長期計画の影響で、2000年代前半から丸の内・大手町一帯はほとんどのビルで建て替えが行われてきました。

今後も再開発が続く予測

都市の再開発は「人」「物」「サービス」などを集約させる効果があり、さまざまな産業・サービスにおける需要増が期待できます。
「東京構想2000」では2025年中の長期計画達成を目標としていましたが、現在もリニア中央新幹線の建設や新たな都市計画の策定が引き続き進められています。
再開発を通じた経済の活性化は今後も続いていくでしょう。

注目される再開発エリア①品川・高輪エリア

東京都内でも特に注目を集めている再開発エリアの一つが品川・高輪エリアです。50年ぶりの新駅として山手線に開通した高輪ゲートウェイ駅、2034年以降の開通を目指すリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅など、交通網の整備が進められています。
交通網の開発プロジェクトと並行して、大企業の誘致を含む複数の再開発事業も進められています。国内においてここまで大規模な再開発が行われた例は少なく、今後の期待も大きいエリアです。

高輪ゲートウェイシティプロジェクト(JR)

2020年に開業した高輪ゲートウェイ駅周辺の品川車両基地の跡地を再開発するプロジェクトが「高輪ゲートウェイシティプロジェクト」です。
このプロジェクトの目玉となっているのが「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」の建設。高輪ゲートウェイ駅に隣接するエリアにあるオフィス・商業施設と住宅地が一体となった新たな都市で、2025年3月に開業予定です。


引用:JR東日本建築設計(2024年5月21日/TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE)

京急の品川駅再開発プロジェクト

京急が所有する品川駅西口エリアの再開発プロジェクトも進行中です。グランドプリンスホテル高輪などがあるエリアを京急とトヨタが共同で再開発する計画で、2025年度着工・2029年度改行を目指しています。
京急は現在品川駅の地平化を進めており、今後も品川エリアの開発に注力していくと見られています。

品川・高輪エリアの住宅需要

品川・高輪エリアは1970年代から分譲マンションが建てられているエリアで、建て替えが近くに迫った築30年・40年の物件が多く存在しています。
またファミリー向けの物件が多いイメージがありますが、近年ではワンルームもポツポツと建てられています。
品川・高輪周辺は交通の便の良い人気エリアにも関わらずそれほど物件が多くないため、ワンルームの需要は高めの傾向にあります。、
将来的に建設される新築ワンルームマンションはそれほど多くないと予測されますが、売りに出されることがあればかなりねらい目だと言えるでしょう。

今後の見通し

品川駅、高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発は現在進行中であり、完成はまだ先です。
2025年度にはKDDIの本社が、2029年度にはトヨタの東京本社が移転予定です。大手通信業者と日本最大の自動車企業が集まる一大都市となることからも、再開発の効果が見て取れます。
トヨタのような大企業の進出により、今後品川駅~高輪ゲートウェイ駅間は自動運転や次世代モビリティなどが集積する新たなビジネス拠点になると予測されます。
ビジネス需要の高まりに伴い労働者が増加し、周辺地域では居住ニーズや不動産需要の高まりなど様々な影響が生まれるでしょう。
完成後もさらに進化し続けていく街であり、投資エリアとしては非常に魅力的だと言えます。

注目される再開発エリア②八重洲・日本橋・大手町エリア

もう一つ注目されているのが東京駅周辺の八重洲・日本橋・大手町エリアです。
2012年に東京駅の丸の内駅舎が復元されてから10年余り。2020年には北通路周辺のエリア再開発が終了しましたが、周辺のエリアではまだまだ再開発が続いています。

「TOKYO TORCH」建設と周辺街区の再開発

東京駅周辺のプロジェクトで最も関心を集めているのが常盤橋エリアの再開発プロジェクトです。
日本一高いビルとなる地上390mの巨大タワー「Torch Tower」が建設中で、周辺の街区にも大規模商業施設を含む大型ビルが建設される計画となっています。


引用:三菱地所設計

2016年公開の映画『シンゴジラ』ではプロジェクト開始当初まだ名称が決まっていなかったTorch Towerの建設後イメージがCGで登場しています。
Torch Tower には地上約300mのフロアに約50戸の高級賃貸レジデンスが導入されるとのこと。
2028年3月末に予定されているTorch Towerの完成・開業に向けて、さらに注目度が高まっています。

八重洲エリアでも超高層ビルが建設予定

東京駅前常盤橋プロジェクト以外でも至る所で再開発プロジェクトが進められています。
2023年から着工が始まった「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」では、約230mの超高層ビルの建設が予定されています。
八重洲エリアは2023年に八重洲ミッドタウンが開業したばかりで、老朽化した施設を取り壊し新たな商業施設を建設する動きが強まっています。
再開発の完了に向けて、隣接・直結エリア含め住宅需要はさらに高まる見込みです。

注目される再開発エリア③横浜エリア

東京都内ではありませんが、周辺の注目エリアとして横浜エリアをご紹介します。
横浜はかねてから首都圏の主要都市として開発が行われてきたエリアであり、「みなとみらい21地区」などで先進的な開発事業が進められてきました。
近年は横浜駅周辺やみなとみらいを中心に大規模な再開発プロジェクトが進行中です。

横浜駅周辺の再開発プロジェクト

横浜駅は「日本のサグラダ・ファミリア」と揶揄されるほど長期間に渡って各所で再開発が行われていましたが、ようやく完成が見えてきました。
現在は周辺のエリアも再開発ラッシュの終盤に差し掛かっている段階です。
2023年には大型音楽アリーナ「Kアリーナ横浜」が開業するなど、商業施設をメインに注目の新スポットオープンが相次ぎました。
2024年に入ってからは横浜美術館が3年ぶりにリニューアルオープン、住宅エリアを含む43階建ての巨大複合施設「THE YOKOHAMA FRONT」が開業し、さらに活気が生まれています。

住宅エリアの再開発も

みなとみらい地区を中心にマンション開発も進められています。
近年発表された中で最も大きい住宅建設プロジェクトは「(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクト」です。
みなとみらい線馬車道駅周辺の再開発に伴うプロジェクトで、ホテルと住宅が一体となった40階建てのビルが2027年に開業予定です。
横浜エリアでは上記プロジェクトを中心に高級マンションの再開発が相次いでいます。東京都心へのアクセスの良さから単身需要も高いため、周辺地域のワンルームもねらい目だと言えるでしょう。

将来を見越したワンルームマンション投資を

東京都心とその周辺エリアは住宅需要の高さから今後も地価や不動産価格は上昇を続けると見込まれています。
また、再開発を進めるエリアはさらに需要が高まることが予測されるため、不動産投資の対象としても注目度が高まっています。
ワンルームマンション投資を行う大半のオーナー様は短期で転売することなく、中長期で物件を保有される傾向にあります。
中長期で物件を持ち続ける場合は特に、将来的な再開発の見通しまで視野に入れて投資することが重要です。
これからエリアがどう発展していくのか?数ヶ月、数年、数十年先の将来像を見越す長期的な視点を忘れないようにしましょう。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。