不動産の価格相場を知るために参考になる数値には、国土交通省による公示価格(毎年3月下旬発表)、
国税庁による相続税路線価(毎年7月上旬発表)、各都道府県による基準価格(毎年9月下旬発表)各市町村による固定資産税評価額(3年毎)、実勢取引価格など様々あります。
その中でも毎年一番早く発表されるのが「公示地価」です。
今年も3月27日に平成30年公示地価が公表されました。
最新の地価の動きから、トレンドやその背景を見ながら、不動産購入や売却を検討するうえで、今後の予測を立てるための材料の一つにしていきましょう。
公示地価とは?
公示地価とは、昭和44年(1969年)に制定された地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が標準地を選定し、毎年年始(1月1日)の時点における正常価格を判定し公示するものです。
判定価格は、各標準地(全国26,000地点)に対し、2,442人の鑑定評価員(不動産鑑定士)が確認を行い、議論を経て鑑定評価されています。
ただし、公示地価の利用目的は、あくまでも土地取引の指標や、公益事業のために国や地方公共団体が所有権などを強制取得する収用の参考価格などであり、例えば実際に住宅(戸建やマンション)を購入する際の価格とは乖離があります。一般的に公示地価は、実勢取引価格の90%程度といわれますが、地域や利用価値によっても異なりますので注意が必要です。
公示地価は、不動産購入検討者にとって、販売価格の参考というより地域間での価格比較や変動率などから読み取る地価のトレンド指標とするほうが適しているといえるでしょう。
平成30年の公示地価の動向
平成29年(2017年)の住宅地の全国平均変動率は、東京など三大都市圏で上昇は見られたものの、地方が下落していたため、横ばい(前年比+0.0%)でした。
しかし、平成30年に入り、前年比+0.3%と上昇に転じました。これは実に10年ぶりの上昇です。
また商業地の変動率を見ても3年連続の上昇、上昇率も三大都市圏、地方ともに平成29年を上回りました。工業地を含めた全用途の平均でも3年連続の上昇となりました。
三大都市圏においても全用途で上昇しています。地方圏では、住宅地の下落幅が縮小し、商業地や工業地では26年ぶりに上昇に転じました。
これらの動向の背景を国土交通省は、「住宅地については全国的に雇用・所得環境の改善が続き、低金利環境の継続による実需の下支え効果もあり、利便性の高い地域を中心に地価回復が進展」、「商業地については外国人観光客を始めとする国内外からの来街者の増加や再開発等による繁華性の向上を背景に店舗やホテルの進出意欲が根強く、オフィスも空室率の低下傾向に伴い、法人投資家の投資意欲が旺盛になっている」、「工業地も特にインターネット通販の普及等を受け、道路アクセスの良い立地の大型物流施設の建設需要が旺盛である」としています。
平成30年の公示地価は、これまで三大都市圏を始めとし、一部の地域が牽引し全体の平均を引っ張っていた状況から、地方圏も含めて全国的に上昇基調を見せ始めたように見受けられます。
これは一過性の動きなのでしょうか。
背景を見ても、実需に基づいた不動産購入環境の改善や、今著しく増えている訪日外国人による需要、再開発の進展など、もしかしたら今後不動産価格が安定、上昇するための基盤が固まったといえるのかもしれません。今後の不動産の動きにぜひ期待したいものです。