前回の記事「首都圏の投資マンションの販売戸数の推移を読み解く」では、首都圏における投資用マンションの販売戸数の推移について解説しました。
ここ数年のワンルームマンション投資はかなり活況を帯びてきていますが、2000年代の中ごろ~ミニバブル期に比べて、新規ワンルームマンションの供給量は少なく、需給のバランスから「即完売」も珍しくないと書きました。
それでは、近年、投資マンションの価格はどのくらい上昇しているのでしょうか?
冒頭に述べたように、「買いたい人は増えている」けれど、「新規供給が少ない」という状況は経済学的に考えると、価格が上昇するということに繋がります。
大雑把に言うと、マンションの価格は、積算(土地仕入れや建物建築費)価格が基本ラインですが、それに加えて需給関係が加味(ポジティブの場合は強気価格設定、ネガティブの場合は弱気価格設定)されて、決まります。
図2は、首都圏における投資用マンションの平米単価の推移を示しています。
これをみると、明らかに2013年頃から値段が上昇しています。2013年の平米単価は98.4万円でしたが、2016年には112.0万円となっており、平米あたり13.6万円、約14%値上がりしています。標準的な25㎡のワンルームマンションでは340万円の値上がりとなります。首都圏全体でこれだけの値上がりですから、都心一等地のワンルームマンションではこの倍近くの値上がりも珍しくないようです。
値上がりの背景には、マンション用地(土地)価格が上昇していることに加えて、下記に示すように建築価格も上昇しています。
図3は、大規模集合住宅の建築費指数の推移のグラフです。
ここで扱っているのは、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート造)物件で、延床1万㎡、10階建て、エレベーター付き物件の想定での指数です(東京の指数、2005年=100)。
2011年から2015年までの5年間集合住宅の建築費は上昇を続けました。2011年の指数が98で2015年の指数が115ですので+17ポイント上昇しています(実際の建築価格ではなく、あくまで指数です。)
建築費の高騰が言われ始めたのは、2011年に起こった東日本大震災の復興工事が本格的に始まった頃です。復興工事に人員がとられて、2012年頃から、建築建設従事者の不足も指摘されるようになりました。さらに、原材料費の値上がりなどが要因のため、2012年になると、建築費の値上がりについて危惧する声が聞こえてくるようになりました。加えて東京オリンピックが2020年に開催されることが決まり、その関連施設工事が始まった2014年あたりからは、もう一段階の人手不足が叫ばれ始めました。
このようなマンション建築の建築費が上がっていることに加えて、土地価格の上昇もあり、投資用ワンルームマンションは2013年以降値上がりしています。
2016年は、この建築費の指数は、わずかですが、下がりました。しかしながら、マンション用地の売り物は少なく適地は現在もかなり高額となっています。そうした状況から、首都圏、とく特に都心の新築投資用ワンルームマンションは、これからもしばらく高値が続くと思います。
「もう少ししたら、下がるかも・・」の期待は、しばらく空振りに終わりそうです。