10月1日より、「賃貸取引にかかるIT重要事項説明」が本格的に運用開始されました。
まず重要事項説明(縮めて「重説」と呼ぶ場合もあります)とはどんなものでしょう。
売買契約や賃貸借契約などの不動産取引に際して重要事項説明書に基づき、契約に関する重要事項を買主・借主に対し説明することです。宅建業法第35条に記載されている内容について重要事項として、対面形式で説明し、その了承を得て、同法第37条に基づき契約書面を交わすということになっています。この重要事項の説明は専門家である「宅地建物取引士」が行わねばなりません。
契約の前に行われるこの重要事項説明ですが、内容が多岐にわたり、1つ1つ丁寧に説明&質問などをしていると、あっという間に1時間ということも珍しくありません。契約前に事前にドラフト版を渡されると、一読する時間もありますが、そうした企業は少ないと思います。
今回の改正で、賃貸契約における重説が、対面形式だけでなく、インターネット上でも行えるようになりました。これを「IT重要事項説明」と呼ぶそうです。具体的には、スカイプなどのビデオ通話、テレビ会議などで、重要事項説明を行うということが認められました。
時間の短縮だけでなく、「説明書をあらかじめ送付」と事前送付が規定されているので、じっくり読む時間を確保することができ、説明内容の理解が深まることが、期待されます。
IT重説の要件とメリット
こうしたIT重説のやり取りをする際には、通信設備に問題のないことに加えて、以下のことが求められます。
1) 宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。
2) 宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること
このように、宅地建物取引士が携わっていることを表明することは、IT重説でもかわりません。
国土交通省「賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明 実施マニュアル概要」では、IT重説のメリットを以下のようにあげています。
1) 遠隔地の顧客の移動や費用等の負担軽減
2) 重説実施の日程調整の幅の拡大
3) 顧客がリラックスした環境下での重説実施
4) 来店困難な場合でも本人への説明が可能
急な転勤による引越など、物件を決めるつもりで行ったとしても、それが遠方だと審査などの問題がありその日中に契約(もちろんその前に重要事項の説明を受ける)という訳にはいきません。
また、引渡し直前の重説~契約となると、落ち着いて聞いて理解することが難しいかもしれませんし、また気になる内容があっても、仕方ないとして契約しなければならない状況になっているかもしれません。事前に重説がなされていれば、余裕を持って契約を迎えられます。
IT重説の問題点は?
一方、デメリットとしてはどのような点があるでしょうか?
大事な住まいを決める際、相手と対面していないと細やかな確認が出来なかったり、画面だけで進めることに不安を感じたりする人もいるかもしれません。
今回IT重説が解禁されたのは、賃貸借契約における借主への重説に限られます。
個人が契約当事者となる売買取引での運用は早くとも2020年以降になると予測されています。
不動産売買(購入・売却)で動くお金は賃貸に比べて圧倒的に大きいものです。そのため、非対面で重説を行うことに、不安を感じてしまう方も多いかもしれません。
不動産売買取引において、「画面を通して安心した重要事項説明が受けられるか」つまり「IT重説の運用開始」、にはまだまだ議論が必要なようです。
いずれにせよ、今回のIT重説導入は、時代の要請とは言え、宅建業法の中でも重要な点の改正です。浸透するまでどのくらい時間がかかるか分かりませんが、業界関係者はもちろん、これから不動産を購入しようとされる方は、注意深く見守っていかねばならないと思います。
詳しくは、国土交通省のHPをご覧ください。
http://www.mlit.go.jp/common/001201030.pdf