この連載は、不動産投資に必要なデータを取り上げ、事例などを交えながら、データの読み解き方、使い方、収集方法などを解説していきます。
ここで、取り上げるすべてのデータは、インターネット上で一般公開されているものです。読者の方も興味があればアクセスして、その元データを見ることができますので、ぜひ参考にしてください。
第1回目は、空室、空き家に関する公的なデータです。
総務省統計局「住宅・土地統計調査」
ワンルームマンションをはじめとした不動産投資を始めようとしている方や、すでにいくつかのワンルームマンションをお持ちの方は、空室については気になることと思います。
都心の一等地におけるワンルームマンションの空室率はかなり低い状況が続いており、この傾向はしばらくは続くと思われますが、空室は収益の減少に直結しますので、注視しておきたいものです。
賃貸住宅の空室については、総務省統計局が公表している「住宅・土地統計調査」でデータを入手することができます。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm
この「住宅・土地統計調査」は、5年に一度、その年の10月1日時点の実態を調査し、総務省が公表しているものです。公表されている最新調査は平成25年(2013年)のデータで、次回の調査は平成30年(2018年)となっています。
その住宅・土地統計調査によると、全国の総住宅数は 6,063 万戸で、このうち空き家の数は 820 万戸、その割合は13.5%でした。前回調査(平成20年)の時が757万戸、その割合が13.1%でしたので、+63万戸、+0.4%と少し空室が増加した状況です。
空き家の定義
住宅・土地統計調査における、空き家には、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つの種類が定義されています。
① 「賃貸用の住宅」の空き家 賃貸物件における空室
② 「売却用の住宅」の空き家 販売用物件の既存在庫(未発売含む)
③ 「二次的住宅」の空き家 「別荘」や「その他住宅(普段住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊りするなど、たまに寝泊りしている人がいる住宅)」を合計したもの
④ 「その他の住宅」の空き家 ①~③以外の、人が住んでいない住宅で、例えば転勤・入院などのために居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(同調査より引用)のことを指します。死亡のため使わなくなった家や老人ホーム、介護施設に入所するために使わなくなった家もここに含まれます。
このうち、「その他の住宅」に属する空き家の数は 318 万戸もあります。全国の総住宅数(6,063万戸)に占める割合は 5.2%ですが、その数は過去 20 年間で約2倍に増加しており、これが、「空き家問題」の最も大きな問題とされています。
投資用マンションにおける空室
①~④のうちマンション投資における空室は、「賃貸用の住宅」の空き家に該当します。ここで投資用マンションにおける空室について考察を述べたいと思います。
平成25年(2013年)のデータでは、「賃貸用の住宅」の空き家数は429万戸、居住中の数は1,851万戸で、これらを単純に足すと2,280万戸となります。(賃貸住宅の総数は、かなり古く賃貸の意思があるかどうかわかりにくいものや、自用の住宅を転勤などで一定期間だけ貸すという事など、様々な要因から、その総数を把握することが難しいため、この2つの数字を合計と仮定します。)空き家数を、単純に足した合計で割ると18.8%となり、広く言われている賃貸住宅の空室率約19%と合致します。
この数字は全国の数字ですが、これらの数字は県、市、区、町という単位でデータがありますので、それらを計算すれば、区市町単位での空室率が算出できます。
また、全国平均の18.8%という数字の中には、例えば建て替え予定や大きなリフォーム予定などといった募集していない物件も空室率に入っています。さらには、築年数が50年を超えるようなかなり古い物件も入っています。こうした物件の空室数を除くと、大都市部では空室率はとても低く、都心一等地では空室がほんの数%であると思われます。
物件を購入する際には、担当者から実際の販売物件(管理物件)の空室率を聞いていただくといいと思います。
空室に関するデータは、今後の賃貸需要を予測することや、現在の賃貸住宅の需給関係を知る上で重要な指標となります。データを正確に読み解くことが求められます。