ここでは、国交省の「インバウンド不動産マニュアル」の概要と、今後インバウンド不動産市場に対し、どう対応していくかについて紹介します。
国交省が作成するマニュアルの概要
現在検討されているマニュアルの概要は、以下の通りです。
・不動産取引における海外と日本の違いについて
・購入者の本人確認をするための手段について
・物件の引き渡し方について ・不動産管理のポイントについて
・その他、外国人のための不動産取引のポイントについて
他にも、外国語に対応したフローチャート、多言語パンフレットへのリンク、不動産関連の専門用語英訳リストなども作成し、平成29年度内の実用化を目指しています。
「インバウンド不動産」による影響
欧米諸国や中国などと比べ、まだ日本の不動産価格は割安で治安や政治も安定していることから、日本の不動産に投資をしようと考えている外国人は増加傾向にあります。また、2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックも、居住目的・投資目的の双方において、機関投資家や個人投資家が注目しています。
国交省が不動産会社を対象に2015年度に実施した「外国人対応に関するアンケート調査」の結果によると、売買の約67パーセント、賃貸の約48パーセントが「2013年度以降、外国人客との取引実績がある」と答えています。そのうちの約85パーセントの売買、約60パーセントの賃貸が、「10年前と比べて外国人との取引数が増えた」と回答していることからも、外国人客が増加しているというのは確実です。
しかしながら、「増加する外国人客のためのマニュアルや外国語の契約書などの整備をしている」と答えた不動産会社は売買・賃貸ともに10パーセントに満たないのが現状です。英語やその他の外国語が堪能なスタッフがいても、70パーセント近くの事業者が重要事項等の説明には通訳を委託して行っています。
外国人客を対応するのに、言語や慣習の違いというのは大きな壁になると言えるでしょう。不動産の契約は国によってその形態や法律が異なるため、あいまいなままにしているとその後のトラブルの原因になったり、取引自体がうまくいかなかったりという事態になりかねません。そうすると今後も増加が見込まれているインバウンド不動産市場の成長を阻害することになってしまうのです。
国交省が検討している「インバウンド不動産マニュアル」は、そのような事態にも適切に対応するために役立つものと考えられます。そのマニュアルを参考に外国人向けの不動産取引のポイントを整理し、また各々が外国語対応のできるスタッフを増やしていくことによって、外国人客との取引対応力が強化され、より一層のインバウンド不動産市場の活性化につながるでしょう。
これから日本で不動産を購入または賃貸しようと考える外国人の数は、確実に増えていくと言えます。それに伴って、日本の不動産会社が外国人にも対応できる力をつけていくことで、日本の不動産のポテンシャルはまだまだ先が期待できそうです。 また、不動産投資家にとっても世界に販売先が広がる事は、将来の出口戦略も広がっていくと言えるでしょう。 今はまだ整備の段階ですが、今後、日本の不動産市場にはさらなる可能性も窺えます。