「賃貸住宅の供給が過剰の様相だ。」とメディアが報じている。はたして、そんなに賃貸住宅は多く建てられているのだろうか?
2017年1月31日に国土交通省から発表されたデータによると、2016年1月~12月の新設住宅着工戸数は、96.7万戸、前年対比+6.4%、そのうち貸家(賃貸用住宅)は41.8万戸、前年対比+10.5%となっており、2016年の建築数の増加を大きく牽引した形となっている。
貸家の建築着工数伸びは5年連続となった。消費税駆け込み需要からの変動減が起こった2014年は総数だけでなく他のすべてのカテゴリーが減った中で貸家は+2%となっていた。そして2016年はリーマンショック以降最高の数の賃貸住宅の建築戸数となった。
上のグラフを見れば分かるとおり、1990年代~2008年ごろまでは、「多い」と報じられている2016年(昨年)に比べても、ずいぶん多くの賃貸住宅が建てられている。1991年~2015年までの平均が約47万戸。バブル崩壊後の1990年代は、経済的には芳しくない中でも賃貸住宅はかなりの数が建てられていることがわかる。それからリーマンショック前まではかなりの数が供給された。その後、リーマンショック時の貸家の着工数の落ち込みは激しかったが、そこから、近年少し回復したという状況だと言えよう。
東京都の賃貸住宅(貸家)の新築着工数を示したのが下図3だ。
東京においても、全国の動向と同じくリーマンショック後の落ち込みは激しく近年回復傾向にあるが、昨今の人口流入の多さを考えるとまだまだ需要はあるだろう。
第1回 【東京圏、1年で12万の転入超過!】でも書いたように、東京23区への人口流入者は多い。それ以外にも、単身世帯の増加、持ち家志向の低下など、東京中心部での賃貸住宅需要を支える要素は多くある。東京中心部での賃貸住宅の需要は底堅いだろう。