不動産投資を検討する際、最も重要視される指標の1つが「利回り」です。
ただ、利回りは高ければ良いというものではなく、投資の目的に応じて使い分ける必要があるため、何%くらいにすればいいのか、なかなか判断が難しいものでもあります。
そこで今回は、利回りの概要と利回りに対する考え方、目安にすべき利回りの基準などについて解説していきます。
目次
1.不動産投資の利回りとは
2.表面利回りと実質利回りの違い
表面利回りとは
実質利回りとは
表面利回りと実質利回りの考え方
3.利回りの比較は世界基準で考える
日本と世界の利回りの比較
東京とそれ以外の地方における利回りの比較
4.利回りでわかるリスクと考え方
5.妥当な利回りのライン
6.まとめ
1.不動産投資の利回りとは
不動産投資の利回りとは「1年間満室だった時に得られる賃料を物件の購入金額で割ったもの」であり、収益性を示す比率です。
例えば、3,000万円で購入した物件を家賃10万円で貸した場合、1年間満室だと120万円の家賃収入を得られることになります。
この場合の利回りは、「1年間の家賃収入(120万円)÷物件の購入費(3,000万円)×100」で計算し、「4%」になります。
つまり、投資した金額(物件を購入した金額)に対して、毎年4%分の利益(120万円)を得られることになり、計算上では25年で投資金額をペイできることになります。
このように、利回りをしっかり把握することで、投下した資金を回収するまでのシミュレーション等が可能となり、計画をたてやすくなるため、利回りについての知識は不動産投資において不可欠な要素と言えます。
2.表面利回りと実質利回りの違い
先ほどご紹介した利回りは表面利回りと言われるもので、諸経費等を考慮していません。そこで大事になってくるのが、諸経費を考慮した実質利回りです。
不動産投資では、表面利回りも実質利回りも両方大事になるため、それぞれの違いをご紹介していきます。
表面利回りと実質利回りでは、その意味合いは大きく変わってきます。
不動産投資のパンフレットやインターネット上の投資物件紹介サイトに記載されている「利回り◯%」は、ほとんどが表面利回りですので、しっかり確認するようにしましょう。
表面利回りとは
不動産投資の表面利回りは、先ほどご紹介したように、「1年間の家賃収入÷物件の購入費×100」で計算することができます。
ただこの計算式には、物件を保有するうえで確実に発生する、管理会社への支払いや物件購入時の仲介手数料などが一切含まれていないため、実際に運用を始めると、確実に表面利回りよりも投資効果は低くなります。
ですので、表面利回りは、購入金額に対して家賃がどの程度の高さで設定されているかを把握する指標と考えることができます。
一般的には、表面利回りの高さが投資リスクの高さだと言われており、表面利回りが大きい方が高い投資効果を期待できますが、失敗するリスクも高まります。
実質利回りとは
実質利回りとは表面利回りから経費を引いたもので、より現実に即した利回りです。実質利回りは、「(1年間の家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100」で計算することができます。
年間諸経費とは、各種税金や管理会社への報酬や保険料、修繕費、共用部分の水道光熱費などであり、購入時の諸経費とは、仲介手数料や不動産取得税、登記の際の印紙代、司法書士への報酬などがあてはまります。
つまり、満室という状況が前提とはなりますが、実質利回りの方が現実的な利回りであり、収支計画を立てる際にはこちらを参考にした方が良いと言えます。
表面利回りと実質利回りの考え方
表面利回りは「物件の状況を把握する指標」と考え、実質利回りは「収支計画を立てる際の指標」と考えるようにしましょう。
どちらの数字も、不動産投資をする上で非常に大事な数字になるため、この違いを理解しておくようにしましょう。
3.利回りの比較は世界基準で考える
「利回り5%以上の物件がおすすめ」や「10%以上でないと儲からない」などという話を聞きますが、それは本当に正しいのでしょうか?
実は、利回りの最低ラインは、あまり知られていないのですが、世界の利回りとの比較をすると参考になります。
ここからは世界と日本の利回りや、日本国内でも東京とそれ以外の地方における利回りを比較します。
日本と世界の利回りの比較
森記念財団が毎年発表している世界の都市総合力ランキングによると、2017年のランキングは「1位ロンドン」、「2位ニューヨーク」、「3位東京」、「4位パリ」、「5位シンガポール」の順番になっています。
各都市を擁する国の不動産投資における実質利回りの相場を見た結果、2017年の調査では「イギリスが3.21%」、「フランスが2.89%」、「シンガポールが2.83%」、「ニューヨーク2~3%程度」というデータがあります。
そして東京を擁する日本の不動産投資の実質利回りの相場は5.02%であり、都市の総合力と比べると世界的には高い水準であることがわかります。
利回りが高いということは、日本の投資用不動産の価格は世界と比べると割安ということです。
上記に挙げた各国を基準に考えれば、東京都心で不動産投資をする場合、実質利回り3%でも高い利回りと言えるかもしれません。
東京とそれ以外の地方における利回りの比較
2020年に行われる東京五輪の影響もあり、東京都内の不動産物件はの価格は上昇しています。
このため実質利回りベースで4~5%程度の物件が増えており、これは過去にない低水準であるという報道もされました。(それでも世界的に見ると高い水準ではあります。)
東京都心部と他の地方都市(札幌・仙台・横浜・さいたま・京都・大阪・神戸・名古屋・広島・福岡)における同規模・同条件の物件の利回り相場を比較した場合、東京では4%後半ですが、地方都市では5%を上回っているというデータもあります。
地方の利回りが高いのは、東京よりも物件価格が安いことが大きな理由の1つですが、地方は東京に比べて空室リスクが高いため、利回りが高くなっているとも言えます。
ですので、そうしたリスクが比較的低い東京への投資を第一の選択肢としておすすめしています。
4.利回りでわかるリスクと考え方
投資においては「利回りが低ければリスクが少なく、利回りが高ければリスクも大きい」という鉄則があります。
利回りが高くリスクが少ない物件は人気がでるため価格が高騰し、結果的に利回りが下がるという市場の調整が働きます。そういった調整が入らず高利回りが続く物件は、市場からリスクが高いと認識されているのだと判断してください。
東京の不動産投資の利回り相場は世界的に見ると、都市としての総合力に比べて高いです。そのため、今後市場によって少しずつ調整されていく可能性を考えた場合、3%後半程度になる可能性も考えられます。
この利回りよりも低い場合はリスクが少なく、高い場合はリスクが増大していきます。そのため、どこまでのリスクを許容できるかを考えながら投資に臨むといいでしょう。
5.妥当な利回りのライン
これまでお伝えしてきた内容を踏まえ、東京都心部にあるワンルームマンションに投資すると仮定すると、新築物件では、実質利回りが2%後半~3%前半くらいが手堅い利回りといえます。中古物件では、4%~5%くらいでます。
これまで、実質利回りについてご紹介してきた情報は、次のようになります。
・都市ランキング上位の国を基準に考えれば、東京都で不動産投資をする場合、実質利回り3%でも高い利回りと言えるかもしれない
・東京の実質利回りの平均は4%後半
・東京の実質利回りは、今後3%後半になるかもしれない
これらは、中古物件も含めたものになりますので、先ほどご紹介したように新築物件と中古物件では、利回りが変わってきます。
6.まとめ
東京都心の利回りは下降気味ですが、世界基準で見れば決して低いわけではありません。
利回りが高い物件はリスクが高いため、見た目の利回りに惑わされずリスクを抑えた投資を心がけるようにしましょう。
世界や日本の状況を踏まえ、東京都心でワンルームマンションの不動産投資を行う場合は、「新築は実質利回り2%後半~3%前半」「中古は実質利回り4%前後」という数字が1つの基準となってきます。