【親が亡くなったらやっておくべきこと】
・最初の1週間は葬儀の手配など
・14日目までは役所での手続きが多い
・10ヶ月以内に相続税の申告・納付を
・チェックリストを用意しておく
親が亡くなると、多くの手続きに追われることになります。役所での書類提出や葬儀の手配など、何をしたらいいか分からず混乱してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
計画的に手続きを進めないと期限をオーバーしてしまったり、場合によっては刑罰が科されたりする可能性もあります。どのような手続きが必要なのか、失敗事例を踏まえつつ順を追って確認してみましょう。
【目次】
1.【~7日目】親が亡くなったらすること
1日目①死亡診断書(死体検案書)の発行
1日目②訃報
1日目③葬儀社の決定・打合せ
1日目④遺体搬送の手続き
2日目:お通夜
2~7日目まで:死亡届等の提出
3日目:葬儀・火葬
失敗事例ケース1:葬儀の方法で親族と揉め事に
2.【~1ヶ月目】親が亡くなったらすること
10~14日まで:役所での各手続き
14日~1ヶ月目:戸籍謄本(除籍謄本)の取得
失敗事例ケース2:役所手続きで余計な時間がかかった
3.【~10ヶ月目】親が亡くなったらすること
1~10ヶ月目:相続手続き
その他早めに行うべき手続き
解約すべきサービス一覧
失敗事例ケース3:相続放棄が招いた予期せぬトラブル
まとめ
参考:親が亡くなったあとにやるべきことチェックリスト
1.【~7日目】親が亡くなったらすること
亡くなって最初の1週間は葬儀の手配や周囲の方々へのお知らせが主になります。
1日目①死亡診断書(死体検案書)の発行
死亡診断書は今後多くの場面で手続き上必要になる書類です。例えば、火葬・納骨などの手続きは死亡診断書なしでは行えないため、なるべく早めに発行しましょう。
病院で亡くなった場合は病院の医師から発行されますが、自宅や他の場所で亡くなった場合はかかりつけ医による診断が必要です。かかりつけ医がいない場合は警察に検視してもらい、死体検案書を発行してもらうことになります。
死亡診断書と同じ用紙内にある死亡届は死亡の事実を知ってから7日以内に提出する義務があります。亡くなったことを知ったら、まずは死亡診断書を発行してもらうのが先決です。
1日目②訃報
近親者、友人、関係者などに親が亡くなったことを伝えます。
通夜・葬儀の日程が決まっている場合は日時や場所も含めて連絡するのがベストですが、まだ決まっていない段階で連絡する場合は亡くなった事実を伝えるだけでも問題ありません。
訃報は喪主が電話で連絡するのがマナーとされていますが、最近ではメール・SNS等で伝えるケースも増えています。連絡相手との関係性によって連絡手段を使い分けるとよいでしょう。
1日目③葬儀社の決定・打合せ
すぐに通夜や葬儀が迫っていることも多いためなるべく早く葬儀社を決めることが大切ですが、その前に生前に故人が葬儀社を決めていないか必ずチェックしましょう。
故人の意思で葬儀社が既に決まっている場合、葬儀費用をあらかじめ積み立てている可能性もあります。生前に葬儀社について聞いていない場合も、遺言書やエンディングノートを必ず参照するようにしましょう。
亡くなったあとで葬儀社を決めると選択肢が限られますし、慌ててオプションなどを選んで余計な費用が掛かってしまうことも少なくありません。できれば前もって準備しておくことをおすすめします。
葬儀社が決まったら葬儀に関する打合せを行います。予算・人数規模・故人や親族の希望を汲み取って最適なプランを選ぶようにしましょう。
1日目④遺体搬送の手続き
遺体搬送は葬儀社に依頼するのが一般的なため、葬儀社を決めてから自宅等へ遺体搬送の手続きを行うことになりますが、急を要する場合や葬儀社が当日中に決まらない場合は搬送のみの依頼も可能です。病院提携の葬儀社に搬送を依頼し、その後改めて葬儀社を選ぶのも一つの手です。
病院の霊安室に遺体を安置できる時間は数時間程度が一般的です。自宅で安置することが難しい場合や、搬入が困難な事情がある場合には、斎場や葬儀社の安置施設を利用することも可能です。
病院から遺体を搬送する場合は退院手続き・入院費の支払いも必要となるため、費用の準備を忘れないようにしましょう。誰が支払いを負担するのか、どの資金から支払うのかを事前に家族間で話し合っておくと、後々のトラブルを防ぐことができます。
2日目:お通夜
通夜は死後2日目に行われるのが一般的で、家族や友人などの近親者が集まり、故人と最後の夜を過ごす儀式として位置づけられています。かつては夜通し行うのが通例でしたが、現在では夕方頃から2時間程度で終える短時間の形式が主流となっています。
葬儀社が通夜の準備や進行を全てサポートしてくれるため、喪主が前もってやるべきことは参列者への連絡以外ほとんどありません。通夜当日は会場の確認や参列者の席順などを決める作業があるため、早めに行って葬儀社と打ち合わせを行うのが一般的です。
2~7日目まで:死亡届等の提出
死亡診断書または死体検案書を受け取ったら死亡届を記入し、死亡を知った日から7日以内(国外にいる場合は3ヶ月以内)に市区町村役場へ提出しなければいけません。正当な理由なく提出期限を超過した場合、5万円以下の罰金が科されることもあるため注意が必要です。
提出先は、故人の本籍地、死亡地、または届出人の住所地です。死亡届の提出後は返却されないため、提出前に必ずコピーを取っておきましょう。
これらの書類提出は葬儀社が代行してくれるケースも多いので、打合せ時に相談してください。
死亡届の提出時には一緒に「火葬許可証」「世帯主変更届」も申請・提出するのが一般的です。
火葬許可証
死亡届の提出時には火葬許可証の申請も行います。
死亡後24時間経過した後でなければ火葬できないことが法律で定められており、火葬の際にはこの許可証が必要です。発行後は大切に保管してください。
世帯主変更届
故人が世帯主、かつ新たな世帯主が必要な場合は原則として死亡日から14日以内に「世帯主変更届」を市区町村に提出する必要があります。
葬儀社に依頼する場合は代理人への委任状が必要なため、あらかじめ確認しておくと安心です。
3日目:葬儀・火葬
葬儀は故人の冥福を祈る儀式で、通常は僧侶を招き、遺族と近親者で執り行います。
一般的には葬儀・火葬を3日目に行いますが、近年では火葬場の混雑により3日以上先になることもあります。長引きそうな場合は事前に保管延長の準備を整えておきましょう。
葬儀前に確認すべき事項
葬儀を円滑に進めるためには、打合せの段階で事前に葬儀社と当日の流れや役割を確認しておくことが大切です。
受付係や席次、焼香の進行といった葬儀全体の流れ、弔電の管理方法や紹介の仕方を事前に決め、参列者数や駐車場の車両台数などを正確に把握しておきましょう。必要に応じてタクシーを呼ぶなどの手配も行います。
火葬の流れ
火葬は通常葬儀と同日に行うもので、喪主は死亡届の提出時に受け取った火葬許可証を持参する必要があります。
火葬の所要時間は約1時間で、終了後に遺骨を拾い骨壺に納める際に「火葬執行済の火葬許可証」が発行されます。この許可証は納骨時に必要となるため、念のためコピーを取って自宅で保管しておきましょう。
葬儀費用支払いと申請
葬儀費用の支払いに必要な請求書は葬儀の後1週間前後で発行されるのが一般的ですが、当日に現金で支払う場合もあります。必ず葬儀社に確認し、誰が払うのかあらかじめ明確にしましょう。
亡くなった人が健康保険加入者であれば「埋葬料」として5万円、国民健康保険や後期高齢者医療保険の場合は「葬祭費」として1~7万円を給付金として申請できます。
葬儀費用支払い時の領収書は給付金の申請に用いるため、必ず保管しておきましょう。
失敗事例ケース1:葬儀の方法で親族と揉め事に
Aさんは父親の死後、通夜や告別式を行わず火葬のみで送る「直葬」を選びました。一般葬を行うには予算が足りず、葬儀に参加するのは遠方の親戚数名を含む近親者のみだったが故の選択でした。
しかし葬儀当日、遠方からやってきた親戚から「弔いになっていない、こんな葬儀では故人が可哀想だ」と口論に発展。以降、父方の親戚との折り合いが悪くなってしまいました。
このように、葬儀のやり方に関するトラブルはしばしば起こります。故人の意思だけでなく、葬儀に参加する関係者の理解を得られるよう準備することが重要です。
2.【~1ヶ月目】親が亡くなったらすること
亡くなってから1ヶ月までの期間、特に最初の2週間は役所や各機関への手続きが必要です。働いていらっしゃる場合は適宜忌引を申請し、手続きのための時間を確保することをおすすめします。
10~14日まで:役所での各手続き
亡くなった後に必要な手続きは死亡後14日以内に設定されているものが多いです。
以下、10~14日で行うべき代表的な手続きの一覧表です。
窓口 | 手続き | 期限 |
---|---|---|
年金事務所 | 年金受給停止手続き | 10日以内or14日以内※1 |
年金事務所or市区町村役場※2 | 健康保険資格喪失届の提出 | 5日以内or14日以内※2 |
市区町村役場 | 健康保険証の返還 | 14日以内 |
住民票除票の取得 | - | |
葬祭費支給申請用紙の取得 | - | |
高額療養費支給申請用紙の取得 | - | |
介護保険証の返還 | 14日以内 | |
介護保険資格喪失届の提出 | 14日以内 | |
障害者手帳の返還 | 14日以内 | |
ハローワーク | 雇用保険受給資格者証の返還 | 1ヶ月以内 |
※1 厚生年金と共済年金:10日以内、国民年金:14日以内
※2 国民健康保険・後期高齢者医療制度の場合:死亡後14日以内に市区町村役場へ提出、健康保険の場合:死亡後5日以内に年金事務所へ提出
期限・罰則に注意
期限が決まっているものは超過した場合罰則を科されたり給付を受けられなくなったりする可能性もあります。
例えば年金受給停止手続きを行わず長期間不正に故人の年金を受給し続けていた場合、詐欺罪として10年以下の懲役が科されることとなっています。
くれぐれも期限を過ぎないよう、手続きに必要な時間を確保しておきましょう。
職場への相談も忘れずに
故人が会社に勤めている場合は保険資格喪失届の提出や埋葬料の申請などを企業が行うケースもあります。
手続きに必要な書類についてなどをあらかじめ相談しておくとよいでしょう。
14日~1ヶ月目:戸籍謄本(除籍謄本)の取得
死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)は相続などの手続き時に必ず必要です。死亡届を市役所に提出した後、戸籍や住民票に反映されるため、死後1週間から10日ほど経ってから取得することになります。
故人の本籍地の市役所で直接請求・郵送での請求・代理人による請求が可能です。1ヶ月以内を目安として早めの取得を心がけましょう。
手続き先によっては提出した戸籍謄本が返却されないケースがあるため、死亡記載のある戸籍謄本は2~3枚取得しておくと安心です。
失敗事例ケース2:役所手続きで余計な時間がかかった
Bさんは母親の死後、市役所での手続きを進めようとしました。しかし、事前に必要な書類や手続き内容を十分に確認しないまま役所に向かった結果、「不足書類があります」と窓口で言われ、再度出直すことに。
その後も役所ごとに必要な書類が異なることや追加書類があることを知らず、何度も役所を訪れることになり、仕事の休みを増やす結果になってしまいました。
「ネットで調べたから大丈夫」と思っていたことが裏目に出たBさんは、手続きに対する慎重さが足りなかったと反省しました。
役所手続きでは、必要な書類が自治体や故人の状況によって異なる場合があります。事前に役所へ電話で問い合わせるなどして手続きの詳細を確認し、効率的に進める準備が重要です。
3.【~10ヶ月目】親が亡くなったらすること
亡くなってから1ヶ月後~10ヶ月目までは相続の手続きがメインになります。
相続に際しては親族間でよく話し合う必要があるため、早めに動いておきましょう。
1~10ヶ月目:相続手続き
相続に必要な手続きはおおよそ以下の通りです。
①遺言書の検認
相続の手続き上、「自筆証書遺言(故人が直接記した遺言書)」が見つかった場合は家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。法務局保管制度を利用した自筆証書遺言や公正証書遺言は検認不要です。
偽造・変造防止のため、検認には約1ヶ月程度の時間を要します。
②相続人の確定
遺言書の検認と並行して戸籍謄本などを参照し、相続人の調査を行っておきましょう。
相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、戸籍上の法定相続人を確認する必要があります。家族が把握していなかった相続人が見つかる場合もあるため、慎重に時間をかけて行ってください。
③財産目録の作成
参照:国税庁「「財産目録」の書き方」
被相続人の保有資産を明確にするため、財産目録を作成します。目録に記載する項目としては預貯金、不動産、株式といったプラス財産だけでなく、借金や未払い金といったマイナス財産も含まれます。
財産目録は遺産分割協議や相続税申告の基礎資料となるため、漏れなく作成することが重要です。
④相続方法決定
相続人は、相続財産が確定した時点で「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択します。
相続人が複数いる場合は全員で話し合い、それぞれどの方法で相続するのか決めておきましょう。
⑤相続放棄・限定承認の手続き(3ヶ月目まで)
相続放棄は初めから相続人ではなかったものとみなしてプラス財産もマイナス財産も一切引き継がない方法で、限定承認はプラスの財産の範囲でマイナスの財産も引き継ぐ方法です。
相続放棄・限定承認を選択する場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。3ヶ月以内に手続きを行わなかった場合、自動的に全ての財産を相続する「単純承認」を選択したことになります。
⑥被相続人の準確定申告(4ヶ月目まで)
被相続人が給与以外で所得を得ていた場合、相続開始を知った日から4ヶ月以内に準確定申告を行い、税金を納付する必要があります。
不動産所得なども準確定申告の対象となるため、過去の確定申告書類をもとに確認し、漏れがないよう準備してください。
⑦遺産分割及び協議書の作成
遺言書がない場合や遺言書通りに遺産を分割しない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、協議の結果を遺産分割協議書に記載します。
この協議書は不動産登記や相続税申告、金融機関での名義変更手続きに必要です。全員の署名と押印が求められるため、不備のないよう慎重に作成しましょう。
⑧各資産の名義変更・解約
相続人が決まり次第、名義変更・解約の手続きを行います。法的に期限が定められていないものもありますが、原則相続税の申告・納税までには手続きを終えておく必要があります。
手続きを行うべき代表的な資産は以下の通りです。
資産の種類 | 期限 |
---|---|
銀行の預貯金(払い戻し、名義変更) | 10ヶ月以内 |
株式 | - |
自動車 | 15日以内(名義変更の場合) |
⑨相続税の計算・申告・納付(10ヶ月目まで)
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。
相続財産が基礎控除額を超える場合は期限内に申告書を提出します。特例・控除などを活用することもあるため、上記の手順に沿って早めに準備を進めておきましょう。
⑩相続登記(3年以内)
不動産を相続する場合、所有者の名義を変更する「相続登記」の手続きを行う必要があります。
かつては任意の手続きでしたが、2024年から3年以内に相続登記が義務化されました。相続登記は売却の手続き等にも必要となってくるため、3年といわず可能な限り早めに済ませることをおすすめします。
その他早めに行うべき手続き
死亡一時金、各種給付金の手続きは基本的に数年の猶予がありますが、生活費の補助に必要な場合もあるかと思いますので、できるだけすみやかに手続きを終わらせておきましょう。
給付金がもらえる代表的な手続きは以下の通りです。
国民年金の死亡一時金請求 | 2年以内 |
---|---|
株式 | - |
自動車 | 15日以内(名義変更の場合) |
解約すべきサービス一覧
故人が契約したサービス等の解約手続きに関しては明確な期限が定められているわけではありませんが、早めに解約しないと不正利用・悪用されるリスクがあります。
以下の利用状況を確認し、時間を作ってなるべく早めに解約の手続きを行いましょう。
・ライフライン(水、電気、ガスなど)
・クレジットカード
・SNSアカウント
・電話
・NHK
・サブスク(定期購読)
・パスポート・免許証 ※返納手続き
失敗事例ケース3:相続放棄が招いた予期せぬトラブル
Cさんと弟は父親の死後、母親に全財産を相続させるため、子供2人とも相続放棄の手続きを取りました。Cさんたち子供は既に全員自立しているため、母親が資産を全て引き継ぐのが妥当だと考えたのです。
しかしCさんたちが相続放棄したため、法律上は他の血族が法定相続人になります。父親には兄弟が2人いたため、この兄弟が法定相続人となりました。
兄弟たちは法定相続分を主張し、生命保険金から法定相続分を分割するよう要求。結果、母親が受け取るはずだった資産の多くが失われてしまいました。母親のために相続放棄を選んだにもかかわらず、逆に大きな損失を招いてしまうことになりました。
このように相続の制度をよく知らず安易に選択することで、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。知識を持った専門家にあらかじめ相談しておくことが重要です。
まとめ
親が亡くなった際に必要な手続きは多岐にわたり、迅速かつ計画的に進めることが求められます。
最初の1週間で死亡診断書の取得や葬儀の準備、死亡届の提出などを行い、1ヶ月目までには戸籍謄本や相続関連書類の準備を行います。10ヶ月目までには相続税の申告・納付や名義変更を含む相続手続きを完了させなければならず、よく知らないまま手続きを行い失敗してしまう事例も少なくありません。
事前に流れを理解し、必要であれば専門家に相談しましょう。また、以下のようにチェックリストを用意しておくことでスムーズに進めることができます。