ケーススタディ

親の時代と違う長生きリスク 30代・40代からの準備を考える

ご自身の祖父母や両親、または、知人などの話に、100歳を迎えたという人の話しを耳にすることはありませんか。最近は、100歳を超える高齢者を知る機会があっても、あまり驚くこともなくなってきました。
すっかり高齢社会に慣れつつ、そして、抵抗感もなくなったという人もいることでしょう。
ところで、これほどの「超・高齢社会」、あなたの老後はこのままで大丈夫でしょうか。

定年後の30年も生きる準備を

家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成30年調査結果(金融広報中央委員会より)の調査によると、「老後の生活についての考え方」で「心配していない」という回答は、1992年では33.6%(世帯主年齢60歳未満の世帯)であったのに対して、2018年では19.8%(全世帯)に減少しています。
一方で「老後を心配している世帯で老後の生活を心配する理由」として、1989年では「十分な金融資産がないから」という理由が最も多い理由でした。そして、30年後の2018年では「年金や保険が十分ではないから」という理由が最も多い回答になっています。ここで年金不安が見え隠れしています。

さらに、「老後における生活資金源(世帯主の年齢が60歳以上の世帯)」という問いには、「公的年金」に対する依存度は年々増しており、1991年では66.5%だったのが、2018年では89.0%と大きな上昇を見せています。
そこで、「年金に対する考え方」の2018年の回答をみてみると、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」と、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」が半々になる結果となっています。後者の「日常生活費程度もまかなうのが難しい(年金ではゆとりがないと考える理由/ゆとりがない世帯)」の回答理由は、半分以上が「年金が支給される金額が切り下げられるとみているから」と考えていることが伺えます。

ここで浮き彫りになってくることは、年金に頼りたいのが心情だが、年金自体が将来減らされてしまうのではないかという心配事です。「長生き時代は認識できている、しかし、そのための年金には頼ることができないだろう」ということは誰しも気づいているのではないでしょうか。

会社員であれば、いつかは定年を迎えることになります。もし、その定年が65歳であっても、人生90年であればのこり25年を、100年時代であれば30年以上もの老後を暮らすための生活資金を準備しなければなりません。
長生きならその分働き続ければいいと考えることも可能かもしれませんが、70歳、80歳、90歳と年齢を重ねていくうえで果たして仕事は見つかるでしょうか。

じつは、健康でいられる年齢として健康寿命というものがあります。男性は72.14年、女性は74.79年(2016年)(※1)とされています。健康寿命を迎えるころから何かしら身体には病気などの症状がでてきて、健康的な生活ができなくなる可能性があるかもしれません。そうなると生涯働き続けるというのは現実的ではないかもしれません。

健康でなくなってしまったが、それでも生きていかなくてはならない状況がくることを想定して、定年後30年は生きるための収入の確保を考える必要があるのです。
そこで、若い働き盛りのうちに、マンションを1室でも持っていれば、その不動産があなたの老後の危機を救ってくれることになります。

年金不足の穴埋めに何を選ぶかが重要

「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)2018年」(総務省)によると、二人以上の世帯のうち無職世帯の1か月間の収入と支出についてその状況を知ることができます。60歳から75歳以降まで5歳刻みで掲示されているのですが、60歳~64歳では、月収支がマイナス115,544円に上っています。この穴埋めに81,766円も貯蓄の取り崩しをしているのです。また、65歳~69歳の月収支はマイナス58,109円、70歳~74歳の月収支はマイナス60,172円、75歳~79歳の月収支はマイナス41,972円となっています。
年金の恩恵を十二分に受給していると思われていた現在の高齢者の生活は、決して年金だけでは足りていないことがここから伺えます。

不足する資金を取り崩す預貯金等の金融資産が潤沢にあれば安心ですが、実際はどうでしょうか。
現在、年金を受給開始できる年齢は、男性は昭和36年4月2日、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人は65歳です。先ほどのデータ上の60歳~64歳を例にすると、実収入のうち110,482円が「公的年金給付」でそのほかは配偶者などからのわずかな収入となっています。
このように、現在年金を受給している世代でも、悠々自適な暮らしはほど遠い状況なのです。
では、30代、40代の人が現在のように年金を受給できるのかというと一抹の不安があることでしょう。受給年齢の引き上げや、年金額の改正など不安なワードを思い浮かべてしまいます。

仮に、60歳時点で、2,000万円の預金があり、あとは年金を頼りに生活しようと考えた場合には、この2,000万円はどのくらい持ちこたえてくれるのでしょうか。
運用をしないでそのまま毎月10万円ずつ取り崩していったとしたら、約16年と6ヵ月で底をつくことになります。60歳からの取り崩しであれば77歳手前で資産がなくなってしまいます。
先ほども申し上げたとおり、年金受給開始が65歳の人の場合だと、60歳で定年して再就職もなければ、65歳までの5年間の生活費も必要になるため、77歳よりも早い段階で預金は底をつくことになるでしょう。

一方、不動産を持っていればどうでしょうか。
他人に貸す家賃収入が月額10万円あれば、預金を取り崩すことなく暮らせます。
また、マンションであれば、法定耐用年数が47年とされているため、仮に40歳でに購入したとしても87歳まで耐用年数があることになります。
ゆうちょの定期貯金の金利が6%(※2)を超えるような30年前なら、お金を使いながら殖やすこともできたことでしょう。
しかし、現在は違います。単に、銀行やゆうちょにお金を預けていても期待するような殖え方はしてくれません。

定年という新しい門出が、不安の入り口にならないように、若い30代、40代だからこそ「長生きリスク」への備えを考えてみませんか。

※1出典:「健康日本21(第二次)」中間報告書(概要)より
※2出典:「(参考)郵便貯金金利(2003年3月まで)」日本銀行より