区分マンション投資といえば、「ワンルームやコンパクトタイプの部屋がメインの賃貸マンションの部屋に投資する」というのが、いまも昔も一般的なイメージでしょう。
しかし、ここ5~6年は実需用マンション(一般的には分譲マンションと言われます)の一室を賃貸用(=投資として)に購入する投資家も増えました。
この2つは、どちらも区分マンションへの投資ということは同じですが、投資家の目的やリスク許容などに大きな違いがあります。今回は、それぞれのメリットデメリットを考えてみましょう。
(注:実需用とは自ら住む為に所有している物件のことです。またその反意語としての投資用は、基本的には賃料収入をえるため、時期をみて売却益をえるために所有している物件のことです。また、分譲賃貸マンションとは、実需用を想定して建築された分譲マンションを賃貸用に貸し出している物件のことをイメージしております。以下、その前提でお読みください。)
晴海フラッグだけじゃない!投資用に分譲マンションを購入する事例
24年1月から入居が始まった晴海フラッグ。販売時は、人気が高く抽選住戸の高倍率が話題となりました。
昨今の晴海フラッグの話題は、「入居者が少なく、夜でも真っ暗」、「全住戸のうち、かなりの割合は投資用に購入されたもの、個人だけでなく、法人も購入し、なかには複数部屋購入している法人も存在する」というもので、かなりの割合の物件が、区分マンション投資として購入されたということが話題となっています。
また、投資用に買った方があまりにも多かったため、現状では賃貸募集物件が溢れかえって、入居者集めに大苦戦しており、賃料の値引きも行われているようです。
晴海フラッグは、ご承知のとおり東京オリンピックの選手村でしたので、東京都が事業施行者ですから、「公的機関が、周辺相場と比較して比較的格安と言われた区分マンションを投資事業者に売っていいのか」という批判が上がっています。
上手く「投資の歪み」を見つけた投資家が目ざとく購入したが、「あまりに数が多かったのでその思惑が外れた」、というのが、6月末時点の現状ということでしょう(この先は、改善するかもしれませんが)。
しかし、晴海フラッグは販売格に割安感があったので投資家が殺到したわけですが、以前から、都心の駅至近など立地条件のよいタワーマンションでは、2~3割程度は投資用での購入ではないかと思われる物件もありました。
高級物件の分譲賃貸マンションを専門に扱う企業のサイトを見ていると、新築引き渡し後入居開始時に合わせて、一斉に何十部屋も募集が出ていますので、その状況がよく分かります。
分譲マンションを投資目的で買う理由は?
このような分譲マンションを投資目的で買う方(あるいは法人)は、賃貸物件として貸し出すことで収益を上げる(インカムゲイン)と売却益を得る(キャピタルゲイン)の両方を目的としているようです。
金融緩和政策が始まった2013年以降つまりこの10年ジワジワと、とくに22年以降は大きく中古マンション価格は上昇しました。
その要因の1つに、実需でのマンション購入に加えて、投資用に分譲マンションを購入する投資家が増えたことがあげられます。この先、多少金利は上がるかもしれませんが、低金利はまだまだ続きそうですので、中古マンション価格上昇の勢いは、まだ続きそうな様子です。
その流れを受けて、とくにファミリータイプの住宅賃料は、マンション価格と同じく、ジワジワと、そしてここ数年は大きく上昇しています。
もちろん、ワンルームやコンパクトタイプも賃料上昇が続いていますが、ファミリータイプの方が上昇率は高くなっています。
このような状況ですから、分譲マンションを投資用に購入する方が増えたわけですが、ご承知のように首都圏の立地の良い(=賃貸需要が旺盛なエリア)マンション価格は、新築・中古ともに大幅に上昇しており、一方で賃料も上昇傾向にありますが、価格上昇の方が大きいため、分譲マンションを投資目的で買う場合のキャップレートはかなり低くなっています。
単純な比較はできませんが、現在では投資用のワンルーム・コンパクトタイプの区分マンションに投資するよりも低くなる傾向にあるようです。
そのため、先ほど述べたように、「インカムゲインを狙いつつ、キャピタルゲインで大きく収益を上げる」という投資戦略となります。
このような投資戦略ですから、市況を読むことが絶対条件となり、一部のビンテージマンションへの投資を除けば、長期保有はリスクを高めることとなります。
投資用区分マンション投資の目的は
一方で、投資用の区分マンションへの投資では、インカムゲイン狙いの投資がメインとなります。
しかし、過去10年を振り返れば、投資用区分マンションの価格は上昇しており、中古物件として売却しても、ある程度のキャピタルゲインを得ることができます。
ただし、分譲マンションの平均単価が1億円を超えている現在では例えば、1.5倍になったとすれば5000万円(税や経費など勘案せず)のキャピタルゲインで、首都圏で平均的な投資用区分マンションが3500万円として1.5倍なら、キャピタルゲインは1750万円となり、その差は大きくなります。
ただし、投資用区分マンションでは、金融機関評価で満額に近いLTVで購入できます。
一方、分譲マンションへの投資では、住宅ローンは組めないため不動産投資用のローン金利が適用され、LTVを高くするには限界があります。このような仮定に基づけば、自己資金投資額に対するキャピタルゲイン率は、投資用区分マンションの方が有利になる可能性も出てきます。