不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

東京都区部では3割を超えるマンション化率! 変わる住宅すごろく

東京都区部や大阪市区部で辺りを見渡すと、あちらこちらにあるマンションが目に入ります。
中心部だけでなく都市部全体で大きくそびえたつタワーマンションや、分譲マンション、賃貸マンション、都市部に住む=マンションに住むというイメージとなっています。

では、全国ではどれくらいの割合の方がマンションに住まれているのでしょう?また、東京23区ではどれくらいの方がマンションに住まれているのでしょう。
今回は、マンションにどれくらいの方が住んでいるのかを見てみましょう。

全国のマンション化率は13%

(株)東京カンテイが24年1月31日に発表した世帯数に占める分譲マンションの戸数の割合=「マンション化率」は13.01%でした。
そもそも分譲マンションは、1棟のマンションを各区分に分けて1住戸ずつ販売されているマンションのことです。居住用と賃貸用がありますが、ともに分譲マンションです。
また、ここでの、マンション化率は、マンションストック数÷世帯数で算出されるものです。

23年の首都圏全体でのマンション化率は22.23%で、前年よりも0.11%増えました。特に東京都は28.21%で(前年よりも0.21%増)都道府県別でみれば最も高く、続いて神奈川県23.09%、大阪府20.29%と続きます。
割合の増加率トップは大阪府で前年よりも0.22%増えています。大阪府は分母にあたる世帯数の増加が減少しており、一方でマンションはそれなりに増えているために起こった現象のようです。
地方では、福岡県が16.18%(全国で5位)とダントツに多くなっていますが、これは後述する都市の成り立ちに要因があるものと思われます。

東京23区では約3世帯に1世帯はマンションに住んでいる!

政令指定都市をみれば、東京23区がトップで32.66%、次に神戸市で30.09%、福岡市が30.06%と続きます。神戸市や福岡市は、以前からマンション化率が高い街として知られています。
かつて、福岡市はマンション化率が1位だった時もあったように、出張や旅行などで福岡や神戸を訪れた事がある方はご存知だと思いますが、コンパクトな街の中に数多くのマンションが建っています。

神戸市は神戸港、福岡市は博多港が太古の昔からあり港町として発展した街です。天然の良港と言われる両港とも、まだ海洋土木技術が発達していなかった大昔に開港されています。
それは山と海が近接しており、海岸でもある程度の深さのある海となっているため、着岸に深い水深を必要とする大きな船の出入りが可能な港を造ることができたわけです。

このように海と山が近くにあることは、港としてはいいのですが、住むことができる平地が少なく、狭い土地に多くの人口を抱えるためには、建物を上に伸ばす必要があったというわけです。世界を見渡しても、港町=高層マンションが多い、はあてはまります。例えば、香港、シンガポール、ニューヨーク(マンハッタン)などが、ぱっと思い浮かびます。

東京都中央区・千代田区では8割以上がマンションに住む!

もう少し細かく、区の単位でみれば、東京都中央区では83.28%の世帯がマンションに住みます。昨年(22年)から4.46%増で、これは超大型タワーマンションの竣工、また複数棟を擁する晴海フラッグが完成したことが要因と思われます。
2位は東京都千代田区で80.96%、3位は東京都港区で76.96%、こうした地域の小学校の中には、通学する生徒のほとんどがマンションに住んでいるという状況でしょう。

マンションに住むことが当たり前?

ここまで見てきたように、分譲マンションに住む世帯の割合を示すマンション化率は、急激にというわけではなく、ジワジワと増えています。
この傾向は、逆行することなく、この先も続くことでしょう。
かつては「住宅すごろく」とよばれた、賃貸マンション→分譲マンション→一戸建て住宅という流れはすでになく、都市部のマンションに住む、ということが当たり前のようになってきました。


ここでいう分譲マンションには、もともと賃貸することを想定されたマンションも多く、都市部では、分譲されたそのマンションを借り手住んでいる世帯もかなり多くなっています。
別のデータをみれば、「マンションは所有するよりも賃貸がいい」と回答する割合も増えており、住宅すごろくの様相は大きく変わっているようです。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。