不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

ワンルームマンション投資における賃貸管理の重要性と入居率の定義

【目次】

― ワンルームマンション投資で多くの方が気にする入居者の獲得
― どんな集計で入居率を計算しているか

ワンルームマンションを購入する多くの方は、日々忙しく働いている方々です。
こうした方々は、区分マンション経営(賃貸住宅経営)をスタートさせると、運営管理の一切を管理会社に委託します。
購入するまでは、販売会社あるいはディベロッパーの営業担当者とのやり取りばかりですが、その後は管理会社とのやり取りが中心となります。そのため、管理会社との関係は、区分マンション投資のカギとなります。

管理会社選びで多くの方が注目するのは、管理会社が ”ウリ“にしている「入居率の高さ」だと思います。今回は賃貸物件と入居率(空室率)について考えてみましょう。

ワンルームマンション投資で多くの方が気にする入居者の獲得

ワンルームマンション投資を行うにあたって、「常に入居者が付くのか」、「安定的に賃料が入ってくるか」は、最も気になることです。
いうまでもなく、入居者がいてはじめて、賃料収入を得ることが出来るわけです。立地条件のいい、賃貸住宅需要の旺盛なエリアの物件では、あまり苦労することはありません。


さらに、駅からの距離がそう遠くなく、築年数も浅ければ、ほとんど心配することはないでしょう。この「気になる点」は、「物件選び」でおおかた決まるとも言えますが、購入したマンションは年々築年数が経ていきますので、いつかは悩む時がくるかもしれません。そんな時に、管理会社の力量が問われます。

入居者募集は、管理会社が自ら入居者を募る事もありますが、加えて管理会社経由で賃貸斡旋会社(客付け会社)に広く空室情報を提供して行います。
ここでは、いかにスピーディーに入居者を獲得することが出来るかが、重要になります。
各管理会社は、入居率の高さを謳って、客付け力の強さ、管理サービス力の高さをアピールしているところも多く見られます。

どんな集計で入居率を計算しているか

管理会社が示している「入居率」ですが、計算方法に明確な定義はありません。
基本的には、「管理している全物件数(全部屋数)に対しての、入居している部屋数」、その割合が入居率です。

しかし、実際には管理会社によって算出方法が少々異なるようです。まず、母数である物件数に対しての考え方の違いです。
基本的に、物件数とは、全管理物件数のうち賃貸することが可能な数ですが、この定義が管理会社によって異なります。

例えば、管理を始めたばかりの物件は客付けがしにくいことから、不動産管理委託契約締結後3ヵ月以内の物件は含まなかったり、自社で保有している物件について含むところがあれば含めないところがあったりと、定義がバラバラです。
この違いだけでも、入居率の計算では1~2%程の差がでてくることもあるでしょう。

また、「空室=入居していない部屋」の定義も様々です。例えば、空室を「入居者が退去してから1ヶ月経過した時点でも入居者がいない部屋」をカウントしている会社もあれば、逆に「前入居者が退去し内装工事が終わった時点、つまり、住めるようになってすぐの時点での空室」をカウントする会社もあります。
ここでは、どの定義が正しいかということではなく、重要なのは、単に入居率の数字だけで判断しないということです。定義が違うのであれば、数値に差が出るのは当然です。

そして、そもそも公言している=“ウリ”にしている入居率の定義がどのように計算されているを明示しているかどうかも、管理会社選びもポイントとなるでしょう。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。