目次
―2つのキャップレート調査
―賃貸住宅(ワンルームタイプ)のキャップレート
―22年の見込み
―まとめ
21年も残すところあと少しになりました。
首都圏においては新築マンション・中古マンションともにバブル期を超える水準となり、またワンルームマンションなどマンション投資熱も過熱が続いています。
今回は、最新のキャップレート調査の結果を見ながら、今後の展開を予測してみましょう。
2つのキャップレート調査
キャップレートは、不動産投資を行う際に投資を行う方がどのくらいの利回りを期待するか、つまり「不動産投資の期待利回り」のことで、不動産投資を行う方にとって重要な指標です。
「現在のキャップレートがどれくらいか」の調査はいくつかのシンクタンクが行っていますが、比較的ポピュラーなものは、「不動産投資短期観測調査=調査協力:社)不動産証券化協会」と「不動産投資調査=(財)日本不動産研究所」の2つでしょう。
2つの調査とも、調査方法はアンケート調査(インターネットもしくは郵送)で、調査は、アセットマネジャーやデベロッパー、保険会社、投資銀行といった不動産投資の専門家が対象になっています。そのため、かなり現場感に近いものだと思われます。
ここからは、21年の賃貸住宅(ワンルームタイプ)におけるキャップレートの動きと、今後の予測について「第32回不動産投資短期観測調査:協力(社)不動産証券化協会」と「第45回不動産投資調査:(財)日本不動産研究所」のデータをもとに解説します。
キャップレートは、立地(エリア・駅からの時間)、建て方(工法)、新築か中古か、などいろいろな変動要素がありますので、ここでのキャップレートの数字は、傾向や状況をつかむためのイメージとして捉えてください。
賃貸住宅(ワンルームタイプ)のキャップレート
第32回不動産投資短期観測調査
「不動産投資短期観測調査」は毎年2回、6月と12月と半年ごとに調査が行われます。執筆時点(12月1日)の最新は21年6月調査(第32回分)となります。
この調査では、賃貸住宅(ワンルーム)のキャップレートでは、最も低い東京港区(赤坂・青山・麻布エリア)で3.8%(前回から変化なし)、東京城南地区で3.9%(前回調査からマイナス0.05%)、東京城東地区では4.1%(前回からマイナス0.1%)でした。
いずれも、コロナショック前から大きな変化はなく、あっても0.1%程度となっており低い利回りが続いています。
また、東京23区の主要エリアでのキャップレートの差は0.2%程度となっており、以前に比べて都心の中での差が小さい状況になっています。
前回調査からキャップレートがマイナスということは、賃料が横ばいとすれば同一条件下で価格上昇を意味し、プラスということは価格下落ということになります。
東京以外の首都圏では、さいたま4.8%(前回から変化なし)、千葉4.9%(前回からプラス0.1%)、横浜4.6%(前回からプラス0.1%)となっています。
この調査では、エリアや都市におけるリスクプレミアムを算出しています。「キャップレートにおけるエリア格差」とも呼べるものです。
これによると、最も低い港区の3Aエリア(麻布・赤坂・青山)を±0とすると、都心では城南地区(目黒区や世田谷区など)がプラス0.1%、城東地区(墨田区・江東区)がプラス0.2%となっています。以前に比べると、この差がだいぶ縮まっているようです。
このようにワンルームマンションへの投資熱は都心中心だけでなく、城東エリアをはじめ都心周辺部まで広がりっています。
第45回不動産投資家調査
財)日本不動産研究所が行う「不動産投資家調査」は毎年4月と11月に行われ、翌月の終わりごろに公表されます。すでに20年以上続く調査となります。
21年11月25日に公表された最新(第45回調査)の数字をみると、賃貸住宅(1棟:ワンルームタイプ)のキャップレートは東京(城南地区)では4.0%となっており、半年前の前回調査から0.2%低下しました。
20年はほぼ横ばい、21年は低下となっており、コロナ下で、投資熱は下がるどころか上がっていることが分かります。
この調査で福岡は横ばい(±0)でしたが、他の札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島と全国的にキャップレートが下がり、ワンルームタイプの賃貸住宅への投資熱の高さがうかがえます。
22年の見込み
まとめ
この調査結果をみると、ワンルームマンション物件(1棟単位での投資・区分マンション投資)のキャップレートはかなり低い状態が続いており、かつ今後もしばらくはいまのような低いキャップレートが続くと見られます。
つまり、この調査結果だけで判断すると、しばらく賃貸住宅への投資の熱は冷めないものと思われます。