不動産エコノミストが語る 不動産投資の必須思考

最新21年基準地価を読み解く 上昇続く首都圏の住宅地!

【目次】

―21年基準地価の概要
―基準地価について
―三大都市圏の概要
―住宅地の概要
―東京圏住宅地の状況
―来年の予測

10月1日から全国の緊急事態宣言やまん延防止等重点処置は解除されました。
しかし、長引いている新型コロナウイルスの影響は、地価にどのような影響を与えているのでしょうか?今回は、9月21日に発表された2021年分の基準地価を分析してみましょう。

基準地価は、都道府県が主体となって調査(=都道府県地価調査)し、国土交通省が集約して発表されます。そのため、都道府県地価ともよばれます。
(本文、図表ともデータは全て国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より)

21年基準地価の概要

21年基準地価は、全用途(住宅・商業・工業)全国平均が-0.4%となり、2年連続のマイナスとなりました。
住宅地はマイナス0.5%となり、昨年は-0.7%でしたので、下落幅が小さくなりました。一方で、商業地ではマイナス0.5%となり昨年がマイナス0.3%でしたので、下落幅は大きくなりました。

全体的な傾向として、住宅地は新型コロナウイルスの影響から概ね回復、逆に商業地は悪化しているという様相でした。
緊急事態宣言・まん延防止等重点処置で、繁華街などでの飲食店・ホテル等が大きな影響を受け、それが地価にも半円された格好となりました。

基準地価について

ここで基準地価について簡単に説明しておきます。
3月に発表される公示地価と目的や用途はほぼ同じですが、2つの大きな違いがあります。
調査主体が公示地価は国土交通省で基準地価は都道府県です。また、価格時点は公示地価が1月1日で基準地価は7月1日となっており、価格時点を比較すると、中間点といういう位置づけになります。

調査地点数は公示地価が約26000、基準地価は約21000地点となっており、うち1625地点(うち住宅地1120地点、商業地505地点)が同一地点です。
同一地点が10%以下のため、県単位や市町村単位での、実数字の単純な比較はできませんが、推移をみることで上昇下落といった傾向はつかむことができます。

三大都市圏の概要

三大都市圏全体では、全用途平均は+0.1(前年は+0.0)、住宅地は+0.0%(前年は-0.3%)、商業地はプラス0.1%(前年は+0.7%)となりました。
変化率は、全用途では僅かにプラス、住宅地はプラス、商業地ではマイナスとなっています。

しかし、3大都市圏をそれぞれ見てみると少し違いがあります。
住宅地においては、東京圏・名古屋圏では前年よりもプラスとなりましたが、大阪圏では0.3%のマイナスとなりました。
しかし、大阪圏のマイナス幅は減少しています。昨年は、どの圏もマイナスでしたので、回復していると言えます。

一方、商業地では、名古屋圏が-1.1%から+1%に回復したものの、東京圏ではプラス幅が1%から0.1%に減少、大阪圏では前年は+1.2%から-0.6%となりました。
新型コロナウイルスの影響が、住宅地では一時的なもので、すでに回復状況にあり、商業地は国内外観光客の動きが依然と厳しく、特にインバウンド観光客の多かった関西エリアでその影響が大きく出たものと思われます。

住宅地の状況

それでは、ここでは主要都市圏の住宅地基準地価を見てみましょう。

東京圏では+0.1%(前年は-0.2%)、大阪圏-0.3%(前年は-0.4%)、名古屋圏+0.3%(前年は-0.7%)となっています。大阪圏だけが依然マイナスとなりました。
地方圏では、-0.7%(前年は-0.9%)、地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)に限ると、+4.2%(前年は+3.6%)となりました。

東京圏の住宅地の状況

都道府県地価調査(=基準地価)では、いわゆる首都圏(おおむね1都3県)は東京圏と称されています。
東京圏の住宅地は、21年はプラス0.1%で、前年のマイナスから回復しました。

主な県庁所在地をみてみると、東京23区はプラス0.5%(前年はプラス1.4%)、横浜市プラス0.6%(前年はマイナス0.4%)、さいたま市マイナス0.4%(前年はプラス0.3%)、千葉市プラス0.4%(前年はプラス0.2%)となっており、首都圏の主要地は、基準地価が上昇していることが分かります。また、たいていのエリアでは、上昇幅が大きくなっています。

今さら言うまでもありませんが、首都圏の住宅地の基準地価は、新型コロナウイルスの影響で上昇スピードがやや落ちたものの、上昇を続けています。

22年の予測

来年(2022年)9月に発表される基準地価を予測してみると、住宅地においては今年に比べて上昇するエリアが増える可能性が高く、また商業地においては、新型コロナウイルスの影響が徐々に収まりつつある状態が続くとすれば、商業地基準地価も今年よりも改善しているものと予想します。

不動産エコノミスト
一般社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産エコノミスト 吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学博士前期課程修了。 (株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職. 不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。