早いもので、今年もあと3カ月を残すのみとなりました。コロナ禍により世界経済は大きく影響を受けました。実体経済の回復はまだかかりそうですが、株式市場や実物不動産投資の市場は、概ねコロナショック以前の状況に戻ってきたと言っていいようです。
株式は上がりすぎか? しかし、JREITまだ戻らず
このところ(8月下旬)の株価を見ていると、日経平均は、安倍首相退任のニュースが流れた時は一次下げましたが、概ね23000円台前半で推移しており、新型コロナウイルスが広まる前の水準を維持しています。
先週はANAやJALといった現在大変厳しい状況にある企業の株価も上昇しました。今後の運航便数が増えそうだという憶測が影響したようです。
株価は、事業の状況に加えて期待値が加味されて形成されますが、冒頭に述べたように、実体経済はかなり厳しい状況にも関わらず株式市場は回復している状況は、「期待が株価を押し上げている」ということになります。つまり、期待通りに推移しなければ、大きく下落する可能性があるわけです。こうした市況は、「不安定感がいっぱい」という状況と言えます。
一方で、株式と同様に取引される不動産証券化商品JREITは、まだ戻っていない状況にあります。とくに、ホテルリート、商業REITは大苦戦中です。
新型コロナウイルスの影響が顕著に出ており、ホテルREITが保有するホテルの稼働率の大半はまだ50%以下という状況で、どんなに早くてもあと半年は苦戦すると思われます。
また、商業施設、とくに都市部の商業施設は、一部では「もう戻らないかも」という声も聞こえてきます。
時価総額の大きなREITが多いオフィスREITも、「リモートワークという働き方が一時的なものでなさそう」という展開が鮮明になってきており、しばらく不調が続きそうです。
住居系REITは、3月半ばに一斉に下がった時期もありましたが、ずいぶん回復し安定しています。不況期に強い住居系REITが再認識されました。
実物不動産投資への資金移動が進む可能性
知人の株式評論家と話していると、「株はかなり戻ってきたけれど、そろそろ下落可能性が出てきたので、大半を売却して、その資金の一部を使ってワンルームマンションを3戸購入した。」と話していました。
期待通りにならず、あるいは実体経済の回復が予想以上に遅れると、株式市場が大幅に悪化するかどうかは分かりませんが、「不動産投資の方が、リスクが少ない」と考える投資家が増えると思われます。
こうした傾向が、もう少しすると顕著になってくるかもしれません。
コロナショックで大きく下がった時に株式に資金をつぎ込み、現在のように回復した市況で売却を行い、ある程度株式投資で儲けた方が、不動産投資にお金を向ける動きが見られ始めます。
投資用マンション(主にワンルームマンション)市場は、コロナショックでも大きく影響を受けませんでした。
そこで、ここ10年くらいの投資用マンション価格の推移を分析してみましょう。
上昇が続く投資用マンション価格
先日、不動産経済研究所から発表された首都圏における投資マンションの市場動向を見てみます。
これによると、2019年の1年間に首都圏で発売された投資用マンションは約6000戸、平均価格は3131万円となっています。
この数字は首都圏全体ですから、東京23区あるいは都心の主要7区に限れば、これよりもかなり高くなっていると思われます。
下図は、2009年以降の首都圏における投資用マンション平均価格の推移を示したグラフです。ここでの投資用マンションは、たいてい単身世帯用の20~30㎡程度のワンルームマンションだと思われます。
このグラフをみれば分かるように、2012年以降右肩上がりで首都圏の投資マンション価格は上昇しています。2012年は2382万円だった平均価格は、2018年には3000万円を超えています。
2013年頃からマンション投資は過熱してきていますが、この間に約600万円の価格上昇、平均的なワンルームマンションは約7.5坪ですから、3000万円だとすると坪単価は400万円、600万円分の上昇は坪単価換算では約80万円となります。
現在の都心一等地の新築分譲マンションは坪単価700万円以上も珍しくなくなりました。
この数字をみると、「上昇幅は過熱ほどでもない」と思う方と、「だいぶん上がったな」と思う方に分かれると思いますが、毎日のように数字を追いかけている個人的な意見を述べると、「それほどでもないんだな」と感じました。
都心一等地のワンルームマンションの希少価値は、今後もますます上がっていくものと思います。
ワンルームマンション価格の上昇はしばらく続くことでしょう。2000万円台で都心新築ワンルームマンションが買えた時代が懐かしく思えてきました。