とまらない物価上昇
昨年から上昇し続ける日本の物価。
総務省から1月20日に発表された2022年12月の全国消費者物価指では、前年比4.0%上昇(生鮮食品を除くコアCPI)と41年ぶりの高い伸びとなりました。
図表1:消費者物価指数と建築工事費デフレーターの前年同月比推移
(国土交通省「建設工事費デフレーター(2015年度基準)」総務省統計局「消費者物価指数」より作成)
図表1は、建設工事費デフレーターと消費者物価指数の前年同月比の推移を比較したグラフです。
建築費はコロナ禍以降、世界的な「ウッドショック」の影響を受け、急上昇しました。
ウッドショックとは、アメリカ等の先進各国で、木材に対する需要が急増したことが原因と言われています。
背景には、リモートワークなどの浸透で、郊外に移住したり、自宅をリフォームしたりする人が増えたことに加え、当時アメリカなどでは金融緩和が進み低金利であったことなど、住宅需要が急増したことに加えて、エネルギー価格の上昇にともない、移動単価の上昇などが挙げられます。
一方で、大規模な山火事が起こるなど、原材料が不足するなどして、供給量は少なくなっていました。
このようにして世界的に木材価格が上昇しました。
また、日本国内で言えば、2022年以降は、円安の影響も加わり木材価格は更に上昇していますが、2022年後半からは前年同月比で見ると、若干落ち着きを見せています。
図表1のグラフに戻り、2つの推移を比較してみてみましょう。
2つの指数とも山や谷の箇所が似ているのが分かります。2012年4月から2022年10月までの推移の相関係数は、0.49と中程度の相関関係を示しています。
ただ、前述の通り、建築費に関してはウッドショックという特殊な外部要因を受けています。
ウッドショックを除外した期間(2014年4月~2019年12月)で再度相関係数を算出すると、0.66と相関係数はより強くなりました。
つまり、ウッドショックとしての建築工事費への影響はいったんは落ち着いたものの、今後は物価上昇のあおりを受けて、建築費も上昇していく可能性が十分にあります。
建築工事費上昇の影響
図表2:建築工事費デフレーターと住宅着工戸数の時差相関
次に、建築費上昇の影響について見ていきましょう。
上のグラフは、建築工事費デフレーターと住宅着工戸数の推移の相関係数を同時期から、1カ月ごとに建築工事費デフレーターを先行にして時差をとって相関係数を算出した結果です。
同時期だと、-0.40と中程度の負の関係でしたが、約1年後にはー0.7までに負の相関係数が強まっています。
つまり、データ上では建築費が上昇基調になってからしばらくたってから着工戸数が減少する傾向にあると見られます。
もちろん、金利など様々な影響も住宅着工戸数に関わってきますので、一概にはいえませんが、建築費の上昇がどうなるかについても、今後の住宅市場に大きな影響を及ぼしますので、注目していくべきでしょう。