有効求人倍率の推移における日本の経済史
先日発表された2020年8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.04倍で前月から0.04ポイント低下ました。
1.04倍は2014年1月ぶりの低水準です。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた雇用情勢の厳しさが続いている状況です。
図表1:全国有効求人倍率(季節調整値)の推移
有効求人倍率の長期推移と日本の経済史を重ね合わせみると、経済市況は有効求人倍率に大きく影響を与えているのが分かります。
有効求人倍率の推移と人口移動の関係
図表2:東京都有効求人倍率(季節調整値)と東京圏及び東京23区転入超過数の推移
オレンジ色の棒グラフで示した東京23区の転入超過数の推移と青色で示した有効求人倍率の推移を見ると、2000年以降は、有効求人倍率と転入超過数の動きが似ているように見えます。
実際、この期間の相関係数を算出すると、0.74でした。有効求人倍率が高くなると、仕事を求めて人が集まってくる構図が推測でき、東京都の求心力の高さがうかがえます。
しかし、2000年以前は、その関係性は見られません。それどころか、東京23区は暫く転出超過が続いていました。
しかし灰色の棒グラフに示したように、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の転入超過はこの期間も進んでいました。
当時も東京への求心力はありましたが、高度経済成長やバブルで東京都心の地価が高くなり、東京圏に転居する人は増えても、東京23区には住まず郊外に住むことを選ぶ人が多かったようです。
特に、バブル期には「ドーナツ化現象」という言葉が出たように、その状況が更に進行しました。
しかし1990年代後半から首都圏でも新築マンションの大量供給が始まり、また消費者の所得水準も上がったこともあり、東京都の有効求人倍率に連動するかのように東京23区の転入超過が進んだようです。