【災害リスクとマンション投資まとめ】
・災害リスクの種類を知ることが重要
・保険や対策、物件選びでリスクは軽減できる
・新築、新築マンションは災害に強い
日本は土地によって地震、台風などさまざまな災害リスクがあり、防災意識に優れた国として知られています。
特にここ数年は環境変化により台風やゲリラ豪雨による水害が増え、南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大地震が起こるリスクについてテレビ等でさかんに報道されています。
不動産投資においても災害に備えた対策を講じる必要があるでしょう。
本記事では災害リスクに関する基礎知識とリスクヘッジにマンション投資がおすすめな理由を解説します。
【目次】
不動産投資における災害リスクの種類
具体的な災害リスクの種類
ライフライン停止に関する実例
不動産投資における災害リスクへの対策
保険に加入する
災害に強い条件の物件を選ぶ
災害リスクを減らす!新築マンション投資をおすすめする理由5選
理由①倒壊しづらい構造
理由②耐震基準を満たしている
理由③管理組合が保険に入っている
理由④電気設備の浸水対策が講じられている
理由⑤防災倉庫の普及
災害リスクに強い物件の選び方
エリア
建築基準
階層
まとめ
不動産投資における災害リスクの種類
不動産投資におけるリスクの一つに災害リスクが挙げられますが、それ以外にも家賃滞納、空室、賃料下落なども思い浮かぶことでしょう。
リスクは外的要因の部分が大きいですが、予め対策を打つことで回避できるリスクも少なくありません。
【災害以外のリスクの種類】
リスクの種類 | 主な対策 |
家賃滞納リスク | 管理を外部に委託する 入居時に保証会社に加入させる |
空室リスク | 新築物件を選ぶ 需要のあるエリアを選ぶ 設備を充実させる |
金利上昇リスク |
不動産投資のリスクについて詳しくはこちら
具体的な災害リスクの種類
具体的な災害リスクとしては地震、津波、洪水、土砂災害、火災などによる被害が挙げられます。
災害リスクというと倒壊の危険性が真っ先に頭に浮かぶかと思いますが、建物自体に影響はなくとも水道・ガス・電気などライフラインが停止する可能性があることには注意が必要です。
ライフライン停止に関する実例
2019年の東日本台風では、武蔵小杉の高層マンションの変電設備が冠水した影響で建物全体が停電。マンション内のエレベーター、給水設備等のライフラインが一定期間使用できなくなる被害が実際に発生しました。
この事例を受け、国土交通省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を策定。高圧受変電設備を使用する建物では電気設備を十分な高さに設置すること、土嚢・防水扉など浸水を防止するための設備を整えることなどを定めました。
ガイドラインには浸水対策を考慮した設計や災害発生時の対応など、各組織が行うべき事項がまとめられており、有事の際にマンションの管理会社がガイドラインに従った運用を行っているか、このポイントが防災において非常に重要なのです。
ライフラインの停止による被害が大きい高層階の物件購入を検討している場合、ガイドラインの対応状況についても確認してみるべきでしょう。
不動産投資における災害リスクへの対策
上記で挙げた災害リスクに対しては、次のような対策を予め講じることができます。
保険に加入する
災害リスクに関わる保険は大きく分けて「火災保険」「地震保険」の2つ。
火災保険は不動産投資ローンを組むうえで加入を必須条件としている金融機関も多く、リスク対策としてよく用いられる手段です。火災や落雷などあらゆる損害に対する補償がついているため、リスクに備える意味合いでも加入が推奨されます。
低層階で台風やゲリラ豪雨等による浸水被害に備えたい場合、水災補償特約をつけることである程度リスク回避ができます。
地震保険は火災保険への加入を前提として追加で加入するもので、地震・津波に伴う被害への補償を行います。
一部損の被害を受けた場合、保険金の5%が支払われるのが相場です。
また、保険料は年々値上がりしていることもあり(年1万円程度)支給額に見合わないと考える傾向もあります。
また、マンションに関しては大規模地震での全壊はほとんどないのが現状です。
2011年に発生した東日本大震災は、アメリカ地質調査所(USGS)のデータによると観測史上世界で4番目の規模とされるなか、東北6県1,642棟のマンションのうち倒壊や建て替えを必要とする致命的な被害を受けた「大破」以上の被害を受けたマンションは1棟もありませんでした。
参照:高層住宅管理業協会「東日本大震災の被害状況について(続報)」
津波被害においても気になるところですが、国土交通省によると東北大震災時の津波で、RC構造かつ3階建て以上の建築物では倒壊の被害は確認されていません。
参考:2012年3月東北地方太平洋沖地震被害調査報告「6.2鉄筋コンクリート増建築物の被害」より
こういった背景から、地震保険に対する考えは人により変化しているようです。
災害に強い条件の物件を選ぶ
前述のとおり、建物により災害による被害状況の差が大きいことがわかりました。したがって、これから物件を購入する際は、災害に強い条件を備えた物件を選ぶことがリスク回避につながると言えるでしょう。
日本は災害大国であり、あらゆる災害に対しリスクゼロの物件は存在しませんが、東北大震災のデータから建築構造や階層数による耐久性は物件選びのポイントになることが分かります。購入予算に応じ、保険加入と物件選びを組み合わせることである程度リスクヘッジすることができます。
災害リスクを減らす!新築マンション投資をおすすめする理由5選
新築ワンルームマンションはあらゆる災害に備えた条件を兼ね揃えているため、災害リスクを低減する一つの投資先としておすすめです。
理由①倒壊しづらい構造
現在、新築マンションはRC造(鉄筋コンクリート造)が多く、他の建築方法と比べて倒壊リスクがかなり軽減されます。RC造は鉄筋とコンクリートのそれぞれの弱点を相互に補完することが特徴です。引っ張りに弱いコンクリートを鉄筋の伸縮性で補い、また、鉄筋が熱や錆に対して弱い部分を耐久性の高いコンクリートが守る構造となっています。
また、木造とコンクリートでは建物自体の倒壊リスクだけでなく、屋内転倒物による死傷率にも影響します。
津波被害においてはどうでしょうか。国土交通省によると東北大震災時の津波で、RC構造の建物のみ流されずに残っており、3階建て以上の建築物では倒壊の被害も確認されていません。
参考:2012年3月東北地方太平洋沖地震被害調査報告「6.2鉄筋コンクリート増建築物の被害」
2016年の熊本地震のデータからも、RC造の建物が他の構造と比較して有意に被害が少ないことが分かります。
またRC造は耐火性も高く、東日本大震災においてはRC造の建物で発生した火事は内壁や防火戸を超えて隣接空間に延焼する事例は一件もなかったという報告があります。
参照:独立行政法人建築研究所「特集 東日本大震災における津波火災・地震火災」
理由②耐震基準を満たしている
先述のように新耐震基準を満たしていないマンションは地震リスクが高まります。木造はもちろん、頑強とされるRC造の建物も新耐震基準を守っていなければ大きな被害を受ける可能性があります。
新耐震基準は1980年代にできたものであり、昨今は築古でも新耐震基準を満たしているマンションが多いです。物件を検討する際は瑕疵担保保険の適用有無も確認しましょう。
瑕疵担保保険とは、物件購入者に不利益が生じないよう設計ミスや施工ミスによる欠陥(瑕疵)に関して、売主や請負人が新築物件は10年間の保証責任(瑕疵担保責任)を負う制度です。本制度は住宅瑕疵担保履行法が施行された2009年10月1日以降に引き渡しを行う新築住宅について適用されます。
中古物件の場合、保証期間は保険商品によって異なります。引き渡しから2年間~最大5年間が一般的と言われていますが、個人間取引ではさらに短くなる傾向にあります。購入時点では表面化していないことが多い修繕リスクを考えれば新築物件が圧倒的に安心です。
瑕疵担保履行法に関しては「不動産投資で欠陥住宅を選ばない方法とポイント」で詳しく解説しています。よろしければこちらもご参照ください。
上記は東日本大震災における宮城県内の耐震基準別のマンション被災状況です。旧耐震基準の建物は半数以上が何らかの被害を受けており、1棟は大破しています。全体数に占める割合を比較しても、新耐震基準に則った住宅が被害軽減に一定の効果を有することが分かります。
理由③管理組合が保険に入っている
マンションの場合、専有部だけでなく廊下やエレベーターなどの共有部が被害を受けることを想定して対策を講じるなければいけません。マンションの管理組合が保険に入っている場合、リスクを軽減できる可能性があります。
特に近年は大型台風など自然災害による事故の増加により共用部の損害が増えているため、管理組合が保険に加入している区分マンションを選ぶのがおすすめです。特に災害リスクの高い物件は、管理組合の方で火災保険だけでなく水害特約などに加入しているかどうかもチェックしておくとよいでしょう。
例えば、弊社が取り扱うハザードマップ浸水エリア内のとあるワンルームマンションでは、管理組合が「水害危険補償特約」に加入しています。万が一浸水によりマンション共用部に被害・損害が生じた場合も、保険による対応ができるようになっています。
理由④電気設備の浸水対策が講じられている
先ほども触れましたが、2020年に台風等による浸水被害への対策として「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」が制定されました。
これにより、現在は災害でライフラインが停止するリスクの高い高層マンションでは非常用電源の活用や電気設備の設置場所変更などが求められるようになっています。最新のマンションはガイドラインに則りあらかじめ浸水対策を十分な設計行っているため、比較的リスクが低いと言えるでしょう。
理由⑤防災倉庫の普及
最近は渋谷区、港区など一部地域の条例で備蓄場所の確保と報告が義務化されています。
また、義務化されていない地域においても谷区、港区など一部地域の条例で備蓄場所の確保と報告が義務化されています。
また、義務化されていない地域においても川崎市など一部の自治体で防災倉庫の設置を呼びかける例もあります。
自主的に防災倉庫を設置するマンションは今後さらに増えていくことが予想されます。災害時に食料を備蓄する防災倉庫があることで住民にリスクへの対策を示し、安心感を持って居住してもらうことができるでしょう。
災害リスクに強い物件の選び方
災害リスクに強い物件を選ぶとき参考にすべき基準・ポイントは以下の通りです。
エリア
エリアごとの災害リスクを検討するうえで、ハザードマップは重要な要素の一つです。
住所などを入力するだけで簡単にエリアごとのリスク情報を調べられる「重ねるハザードマップ」を国土交通省が無料で公開しています。物件購入前に一度参照すべきでしょう。
ただし、ハザードマップも万能ではありません。ハザードマップは国や都道府県、市町村から提供された被害想定を基にして作成されたものであり、色がついてない=安全ではないという点には注意しなければなりません。例えば、東京都港区では液状化等の地盤災害で防潮施設が機能不全になった場合の津波ハザードマップも公開されており、別途確認が必要です。
中小河川の一部や内水氾濫などは被害想定自体が行われていない場所もあるため、その他の情報も参照して総合的に判断すべきです。
また、リスクのある地域ではどのような対策がとられているか別途確認することをおすすめします。例えば台風や豪雨でたびたび氾濫の被害が発生する荒川・隅田川周辺のエリアでは、コンクリートによる直立の防潮堤を改築して盛土による緩傾斜型堤防・スーパー堤防の整備を実施するなどの対策を行っています。
こちらも対策している=安全というわけではありませんが、ハザードマップに載っていない判断材料としては重要です。さまざまな角度から調査して実際のリスクを判別しましょう。
建築基準
先述の通り地震・火災・津波といった主要な災害リスクを考慮すると木造よりRC造の建物が強いことは明確です。加えて新耐震基準を満たした物件であることも重要です。そのため不動産投資において新築マンションの需要は今後さらに高まるといえるでしょう。
階層
マンションを購入する場合、選択する階層によって水害における災害リスクが異なってきます。高層階の方が洪水や高潮、津波による被害が少ないため、高層階を選ぶオーナーも一定数います。
ただし高層階はリスクの低さを考慮して低層階よりやや高めの価格設定となっているのが一般的です。有事には保険を利用する前提で手頃な価格の低層階を選ぶオーナーもいるため、自分の考えに合う条件を選びましょう。
まとめ
台風や豪雨、地震などあらゆる災害リスクに備える視点が不動産投資には重要です。今回ご紹介した事例を参考に、それぞれのリスクに合わせた対策を講じながら災害に強い条件を持ち合わせた物件を選びましょう。
建物の構造という観点で見ればマンションは明確に強みがあり、災害リスクを軽減できる要素が多いと言えます。また、自治体の動向やマンションの管理組合による災害対策意識が高まっていることから、これからの新築マンションにはかなり期待が持てるのではないでしょうか。