賃貸向けのマンション・アパートを長期で保有する方にとって、施設の老朽化は必ず起こり得る問題です。
アパート経営では経年劣化に伴い大きなリフォームを行うことも多いですが、ワンルームマンション経営では大規模なリフォームの頻度は少ない傾向にあります。
特に新築で物件を購入した方にとってはしばらく縁のない悩みですが、長期的な視点で見ると大規模な修繕やリフォームについてもよく考えておくべきでしょう。
アパートやワンルームマンションなどの賃貸物件はタイミングでリフォームを行うべきか、リフォームの際に気をつけるポイントなどを解説します。
目次
1.築20年?賃貸物件をリフォームするタイミング
設備ごとのリフォーム目安
設備が時代遅れになる場合も
分譲マンションには修繕積立金がある
2.リフォーム価格の相場
入退去時の原状回復
水回りの設備を含む大規模リフォーム
3.リフォームの判断は計算で求める
空室期間から計算
詳細に調べたい場合は「リフォーム利回り」
4.まとめ
1.築20年?賃貸物件をリフォームするタイミング
適切なタイミングは物件や設備の状態によって大きく異なりますが、ワンルームマンションやアパートなどの賃貸物件でリフォームが必要になるタイミングは一般的に「築20年」とされています。
海外ドラマでは入居者が自ら壁のペンキを塗るような場面が散見されますが、日本では賃貸住宅の入居者は新築物件・築浅物件を好む傾向にあります。
そのため、設備の古い物件は築浅物件と比較すると空室になりやすいです。
特に時間が経つと傷みが分かりやすく出てくる水回り設備やデザインが古い箇所は、定期的にリフォームすることで入居者の満足度や空室率に大きな違いが出ることも珍しくありません。築20年程度のタイミングでリフォームを決断するケースが多いのはそのためです。
設備ごとのリフォーム目安
水回り:10~20年
建具(ドア・窓など):20~30年
外壁:10~20年(マンションの場合は管理組合で大規模修繕を行う)
設備が時代遅れになる場合も
壊れて使えなくなりそうな設備を交換しなければならないのはもちろん、時代によって変化する居住者のニーズに合わせた設備の入れ替えが必要になる場合もあります。
過去に不動産投資スクエアで行ったアンケートでは、都内マンションに住む独身女性の半数以上が「賃料がアップしても独立洗面台がほしい」と回答しています。
一昔前はワンルームと言えばトイレ・浴室・洗面台が一体化したユニットバスが主流でした。
しかし現在では水回りの設備を分離させた間取りの人気が高いため、空室リスク対策として独立洗面台などを取り入れるケースが増えています。
水回りの例にとどまらず、以前は当たり前だった設備が現在では人気がなく空室率を上げる原因になっていることも往々にしてあります。
時代遅れになった設備を入れ替える意味合いでリフォームを検討するのも一つの手です。
入居者入替のたびに壁紙クロスの張替えやフローリングの補修など、原状回復は必要です。
ただし、設備の入れ替えなど比較的大規模なリフォームが必要になるのは築20年程度からです。
借主の故意・過失でついたキズや汚れは敷金や退去後の請求で賄えますが、経年劣化による設備の入れ替えは貸主が負担することになる点には注意しましょう。
分譲マンションには修繕積立金がある
ワンルームマンションをはじめとする、区分マンションは一棟まるごと保有する場合とやや異なるポイントがあります。
専有部の修繕やリフォームの決定権を持っているのはオーナーですが、エントランスや外壁など共用部の修繕は管理組合が主体となって行います。
修繕にかかる費用は「修繕積立金」として管理組合に毎月一定額をプールします。
建物全体の大規模修繕工事を行う場合、大きな費用が発生しますが、全部屋のオーナーが費用を負担しあう区分マンションの方がコストを抑えられます。
2.リフォーム価格の相場
リフォームにかかる工事費用は地域や時期、物件のグレードや交換が必要な設備などの条件により異なります。
今回はある程度グレードの高い風呂トイレ別のワンルームマンションを想定してリフォーム価格の相場を見ていきます。
入退去時の原状回復
クロス(壁紙)の張り替え | 3~5万円 |
フローリング(床)の張り替え | 10~20万円 |
水回りのメンテナンス | 1~3万円 |
エアコンのクリーニング | 3万円程度 |
クロスの張替えや軽いメンテナンスなど入退去時などに行う原状回復工事は10~15万円程度が相場です。
入退去時はクロスを張り替えるのが一般的ですが、デザイン性の高いアクセント入りのクロスを使用した場合はプラス10~30万程度かかります。
水回りの設備を含む大規模リフォーム
キッチン | 10~50万円 ※ミニキッチンの場合 |
浴室 | 50~150万円 |
トイレ | 5~30万円 |
洗面台 | 10~30万円 |
配管の取り替え | 20~50万円 |
設備のグレードにより価格は異なりますが、キッチンや浴室などの水回りを一度にすべてリフォームした場合は100万円を超えると考えた方が良いでしょう。
一度に大きな出費を避けたい方はまとめてリフォームするのではなく、気になる部分を都度取り替える形にするのも一つの手です。
3.リフォームの判断は計算で求める
原状回復程度のリフォームで済ませるか、大掛かりな取り換えリフォームを行うかの判断は実際に計算して求めてみましょう。
空室期間から計算
リフォーム費用の妥当性を簡単に計算したいときは客付き状況、つまり空室が長く続くかどうかで判断することができます。
例えば家賃10万円の部屋で空室が半年続くと仮定すると、単純計算で60万円の損失となります。
空室による損失がリフォームにかかる費用を上回ると予測される場合は、ある程度お金をかけてでもリフォームする必要があると言えるでしょう。
詳細に調べたい場合は「リフォーム利回り」
リフォームにかかる費用を詳細に検討したい場合は、リフォーム後の賃料などから逆算する「リフォーム利回り」を使うのがおすすめです。
賃料が上がらない場合も、リフォームによって家賃下落を防いだと仮定して同じように計算することができます。
リフォーム利回りは「(リフォーム後の賃料-現在の賃料)÷リフォーム予算」で求められます。年間利回り10%程度が一般的な基準となっているため、利回りをあらかじめ設定して割り戻す形でリフォーム予算を決定することもできます。
4.まとめ
最近は新築ワンルームに比べて安く、利回りが良い中古ワンルームマンションを購入する方が増えてきました。
しかし中古マンションは既に居住者がいるため設備の状態が分からないケースが多く、前所有者がリフォームしていなかった場合はしばらくすると多額のリフォーム費用がかかることになります。また、場合によっては購入してすぐに大規模な修繕が必要になり、多額の費用が掛かるケースもあります。
築20年を超えるような築古物件は空室リスクも高いため、賃料の面でも不利になることが多くなります。
中古マンションは、安く買っても結果的に新築と同じくらいのコストがかかる可能性もあるので、慎重な物件選びが大切です。物件選びに慣れていない初心者の方や、突発的な大きな支出が発生すると影響が大きい方は新築マンションの方が安心してマンション経営ができるでしょう。