不動産投資を行う際に、空室リスクへの対処法として、「借上保証」「サブリース」「30年一括借り上げ」などを謳ったプランをおすすめされることは少なくありません。
例えば「30年一括借り上げ」は家賃(空室)を30年間保証してくれる心強い制度に見えます。「借上保証」「サブリース」も最近なにかと話題になることが多いですが、一方で何か裏があるのではないか?と不安になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、30年一括借り上げ、サブリースのような家賃保証を謳ったプランの詳細や、注意点、失敗しない見極め方についてご紹介していきます。
借上保証やサブリースなどの家賃保証システムは便利な反面、思いもよらないリスクもあるため、注意するようにしましょう。
目次
1.30年一括借り上げ(サブリース・借上保証)とは
サブリースとは
30年一括借り上げとは
2.サブリースのメリット・デメリット
サブリースのメリット①空室保証がある
サブリースのメリット②入居者と直接関係を持たなくてよい
サブリースのメリット③相続税対策になる
サブリースのデメリット①保証賃料が相場より低い
サブリースのデメリット②免責期間(免除期間)がある
サブリースのデメリット③保証賃料見直しのリスク
サブリースのデメリット④売却しにくい
3.損しない!サブリースの選び方と注意点
企業としての安定、信頼度
賃貸物件としてのニーズ
4.まとめ
1.30年一括借り上げ(サブリース・借上保証)とは
不動産投資を検討するうえで「30年一括借り上げ」「サブリース」といった言葉はよく耳に入ってくるかと思います。「一括借り上げ」「サブリース」はほぼ同じ意味で、どちらも物件を転貸して運用する制度を指しています。
それぞれの言葉の意味を改めて確認してみましょう。
サブリースとは
サブリースとは、オーナー(貸主)が不動産会社に対して物件を賃貸し、その不動産会社が実際の入居者に転貸(又貸し)するという制度です。
つまり、空室か否か(入居者の有無)に関わらず、直接の借主であるその不動産会社から毎月賃料収入が入ります。不動産会社が直接物件を借り上げるため不動産管理に関わる作業が簡潔なのがサブリースの特徴です。それに加えて空室時の家賃も保証されるため、利用するオーナー様も多いようです。
30年一括借り上げとは
30年一括借り上げとは、不動産会社が30年分の家賃(空室)を保証するという制度です。実際の空室状況に関わらず、不動産会社からオーナーに毎月保証された家賃が振り込まれる仕組みになっています。つまり、30年という期間を規定してサブリースを行うのが「30年一括借り上げ」制度です。
ただし、この制度を利用した場合も30年間ずっと一定の家賃額(賃料)が保証されるわけではありません。
多くの不動産会社では、契約が数年ごとに更新されて途中で保証賃料が見直される仕組みになっています。空室ができた直後の一定期間を「入居準備」として家賃保証を免除している場合もあるため、「30年間ずっと家賃額が変わらない」と勘違いして購入し、トラブルに発展するケースもたびたび見られます。
2.サブリースのメリット・デメリット
サブリースは入居者がいない状況であっても「不動産会社が借り上げてくれるため、一定期間は家賃収入がなくならない」という強みがあります。
空室リスクを背負うことなく不動産投資ができるという意味では非常に魅力的なサービスに見えますが、もちろん実際は損をする可能性もないとは言い切れません。むしろ「家賃保証」という謳い文句の裏にある実態をきちんと把握したうえで検討すべきでしょう。
サブリースのメリット・デメリット両方を見ていきます。
サブリースのメリット①空室保証がある
サブリースは不動産会社に物件を賃貸しているため、入居者の入替時の原状回復期間(次の入居への準備)や、募集期間などの空室時も家賃が発生します。
つまり、通常なら家賃収入がなくなる空室期間においても家賃が保証されるのがサブリースのメリットだといえるでしょう。
サブリースのメリット②入居者と直接関係を持たなくてよい
サブリースでは購入した物件の管理や入居者とのやり取りをすべて不動産会社に委託するため、入居者が起こしたトラブルや滞納、修理などのコミュニケーションを直接行う必要がありません。オーナー業務にかかる時間・心理的コストが大幅に削減されるため、精神的な負担を減らすことができます。
サブリースのメリット③相続税対策になる
不動産投資は相続税対策の一環として取り入れられることも多いですが、節税の恩恵は賃貸事業を行っている、すなわち借主がいる状態でないと受けられません。借主がいない状態での運用は賃貸事業として見なされず、相続税対策にならない場合があります。
サブリースは実際の空室状況に関係なく満室として扱われるため、確実な相続税対策になります。
なお、不動産投資を活用した相続税対策について、詳しくは不動産投資を活用した相続税対策をご参照ください。
サブリースのデメリット①保証賃料が相場より低い
サブリースはオーナーとして自分の判断で賃料を調整することができず、不動産会社から支払われる保証賃料は相場賃料より低く設定されているのが一般的です。
そのため、周辺地域の相場よりも受け取る賃料が少なくなってしまいます。また、年始など賃貸のトップシーズンに家賃を上げて募集するなどの調整ができないため、利益獲得のチャンスを逃してしまう可能性があります。
サブリースのデメリット②免責期間(免除期間)がある
契約内容によりますが、サブリース契約では最初の募集期間(入居準備期間)や、途中空室時に数ヶ月間賃料を支払わなくてよい「免責期間(免除期間)」があるケースがほとんどです。免責期間中は不動産会社からの振り込みがストップします。
例えば免責期間が3ヶ月で5ヶ月間空室状態だった場合、最初の3ヶ月は賃料が入らず、残りの2ヶ月間のみ通常通り賃料が支払われます。
「安定した収入」がサブリースのメリットであると先ほど申し上げましたが、免責期間が設定されている場合は賃料収入がストップするリスクがあることには注意が必要です。
サブリースのデメリット③保証賃料見直しのリスク
先述した通り、サブリースは(免責期間を除き)空室状況に関係なく賃料が入るシステムになっています。しかし、ここでいう「家賃保証」は契約が終わるまで全く同じ額が支払われるという意味ではありません。
多くの不動産会社では2~3年ごとに賃料の見直しが行われるほか、市況や空室状況に応じて適宜保証賃料の減額要求をするケースもあります。
その結果、契約の数年後には当初の想定より低い賃料収入になってしまうことも珍しくありません。
サブリースのデメリット④売却しにくい
サブリースの物件は売却後の買い手も同じくサブリース契約を引き継ぎます。
そのため「少しでも高い賃料を得たい」「空室時は自己利用したい」「希望の管理会社を使いたい」などの需要を取り込みにくくなり、売却先が制限されるリスクがあります。
3.損しない!サブリースの選び方と注意点
ここまで解説してきたように、サブリースは「空室が保証される」「入居者トラブルに巻き込まれない」といったメリットがある一方、「賃料が低い、免除期間や賃料見直しがある、売却しにくい」などのリスクも存在します。
サブリースを契約する場合、損しないためにはどのように不動産会社を選ぶべきでしょうか。
企業としての安定、信頼度
サブリース契約を行う際は必ずサブリースを行っている不動産会社がどのような物件を取り扱っているか(管理しているか)を良く調べておきましょう。
不動産会社の視点で見ると、サブリースは出るお金(家賃保証)と入るお金(転貸収入)のバランスを取って物件を運用しています。時には空室時のリスクを会社が追わなければならないため、借主が安定して決まる物件かどうかは非常に重要です。
例えば都心など賃貸需要が安定した物件をメインに管理している会社と、ニーズにばらつきがある地方や郊外の物件を管理している会社では、運用の安定感・信頼度が大きく異なります。
万が一サブリース契約を結んでいた会社が倒産した場合、当然家賃保証も管理代行もなくなり、突然賃料の保証がない状態で物件の管理を行わなければいけない事態になることも考えられます。
サブリースのメリットを守るという意味で、信頼できる企業を選ぶことは非常に大切だといえます。
賃貸物件としてのニーズ
これもまた当然ですが、空室が多い物件は見込まれる収益が低いため賃料設定がどんどん低くなっていく傾向にあります。家賃保証があるかどうかに関係なく、他人に管理を任せて問題ないほど魅力のある物件なのかをまず検討する必要があるでしょう。
賃貸物件としての需要が高く、利用者が継続的に見込める物件を選ぶことがサブリースで損をしないための大きなポイントになります。
4.まとめ
30年一括借り上げ、サブリースといった制度が原因となったトラブルは定期的に起きており、消費者庁でもサブリース契約のトラブルに関する注意文が出されていますが、サブリース契約自体が悪というわけではありません。重要なのは契約前に内容をしっかり理解しておくことです。
安定した賃料収入や管理作業の削減などメリットもありますが、が、一概に「サブリースには家賃保証があるから空室が出ても問題ない」とは言えません。保証賃料が低くなるなどのデメリット・リスクもあるため、不動産投資を行う上ではあくまでも何かあったときのオプションとして持っておくべきです。
借上保証を利用しなくても一般賃貸で採算が見込める物件選びを念頭におきましょう。