国の基幹統計の1つである「住宅・土地統計調査」の最新版が9月25日に公表されました。
5年ごとに行われる本統計調査ですが、最新の「第16回:令和5年調査」は23年10月に調査を実施され、確定値がこの度公表されました。
ここでは、調査結果から「住宅に占める賃貸住宅の割合」の変化について見てみましょう。
全国の持ち家比率
「所有する住宅」に住むことは、「持ち家」に住むと言われます。
ちなみに、「持ち家」という言葉は、日本独特のいい方で、英語ではown house ですから「持つ」ではなく「所有する」と表現しています。
全ての住宅の中で、「所有者が住んでいる住宅の割合」の事を「持ち家比率」と言います。不動産業界での言い方をすれば「実需」の住宅です。
「持ち家比率」は、不動産市況が良くない(=住宅価格が相対的に低下)時には増え、その逆(=住宅価格が相対的に上昇)の時には減ると思う方も多いようですが、本調査では、バブル崩壊直後の1993年以降の30年間(=7回分)を見れば、概ね60%(最小59.8%最大61.7%)と横ばいが続いています。
最新の調査では、我が国にある「持ち家」は3387万6千戸で、総住宅数に占める割合「持ち家比率」は60.9%となっています。2018年の前回調査からは0.3ポイント低下しました。
借家はどれくらいあるのか
それでは、借家(=賃貸住宅)は、どれくらいあるのでしょうか。
全ての住宅から前述の持ち家分を引けば、借家分になりそうですが、「不明」の分もありますので、そうでもないようです。
最新の調査では、借家は全国で1946万2千戸あり、40万7千戸の増加、住宅全体に占める割合は35.0%となっています。
割合は前回調査に比べて0.6ポイントの低下となっていますが、過去30年をみれば、35%~38%辺り(35.0%~38.5%)で推移しいています。
借家で増えているのは?
この統計調査において、借家は「民営借家」、「給与住宅(=いわゆる社宅など)」、「公営の借家」、「公社・公団(都市再生機構)等の借家」に分かれています。このうち圧倒的多数を占めるのは民営社宅です。
個人や法人が所有している賃貸用の住宅である「民営社宅」は、全国に1568万4千戸あり、総住宅数に占める割合は28.2%となっています。「民営借家」の総住宅数に占める割合は、ここ10年は28%程度で推移しています。30年前の1993年は26.4%で1076万2千戸でしたので、割合だけをみれば微増ですが、実数では1.5倍以上となっています。
公営の社宅、公団・公社の社宅は、実数・割合とも減少しています。
割合で見れば1993年に5.0%あった公営の社宅は23年には3.2%となっています。
1970年代に全国各地で県営住宅、市営住宅といった公営の集合賃貸住宅が建築されました。それから50年が経過し、建て替えられた物件もあるようですが、取り壊した住宅も多いようです。
また、公社・公団の住宅も同様に1993年には2.1%でしたが、23年には1.3%となっています。
これらの状況をみれば、「良質な住宅を、所得などに応じた家賃で提供する」という公的住宅の役割は終わりつつあるのかもしれません。
その一方で再び注目されているのが給与住宅(=社宅)です。
復活のキザシの給与住宅と人材確保のための賃貸物件保有
一般的には社宅とよばれる給与社宅は、バブル崩壊から2000年代前半にかけて企業が手放すことが増えたため、大きく減少しました。
その放出された場所に、分譲マンションや賃貸マンション、投資用の分譲マンションが建築されました。
特に2000年代の前半は、首都圏では、空前のマンション建築ラッシュでした。
社宅数は、1993年には205万1千戸でしたが、2018年には110万戸まで減少しました。
しかし、最新の2023年調査では130万2千戸(全体の2.3%)と少し回復のキザシが見え始めました。
新卒・中途採用が難しくなっていることや都市部での賃貸住宅賃料が上がっていることなどから、社員の福利厚生の一環としての社宅が見直されていることが増加基調の背景にあると思われます。
社宅を新規に購入、あるいは建築する企業が増えており、また建て替える企業も増えているようです。
また、社宅を1棟という形で保有しないまでも、賃貸前提の分譲マンション(=投資用のマンション)の部屋を複数部屋所有し、それを社宅として利用するという企業も増えているようです。